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2023年08月01日

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弊財団は、国指定重要無形文化民俗文化財「淡路人形座」の東京公演(主催:渋谷区)に協賛しております。

今回の演目は「戎舞(えびすまい)」、「東海道中膝栗毛」となります。ご興味にある方は、是非ともお越し下さいませ。

●2023年11月26日(日) 13:00開演(12:30開場)

●渋谷区文化センター大和田 伝承ホール (渋田駅から徒歩5分)

●全席指定 3500円(高校生以下1500円)

詳しくは、渋谷区大和田公式ホームページをご覧下さい。

www.shibu-cul.jp

2023年07月27日

文化審議会は、7月21日、重要無形文化財の保持者(人間国宝)の認定などを文部科学大臣に答申しました。

今回答申された12人のうち、4名もの方が「伝統文化ポーラ賞」受賞者になります。

●吉田玉男先生(第17回(1997年)伝統文化ポーラ賞 大賞):文楽の伝承・振興

●祝嶺恭子先生(第24回(2004年)伝統文化ポーラ賞 優秀賞):首里の織物の伝承・振興

●松原伸生先生(第38回(2018年)伝統文化ポーラ賞 優秀賞):長板中形の制作

●藤塚松星先生(第39回(2019年)伝統文化ポーラ賞 優秀賞):竹工芸の制作・伝承

人間国宝は、芸能55人、工芸技術54人 合計109人となります。

伝統文化ポーラ賞については、https://www.polaculture.or.jp/promotion/polaaward.html

2023年07月14日

風流の里_A4表 風流の里_A4裏

 

弊財団は、「『風流の里』徳島県三好市の民俗芸能と檜瑛司が残したもの」に協力いたします。

1100年以上昔の雨乞いが起源とされる徳島県三好市の「西祖谷の神代踊」が「風流踊」のひとつとしてユネスコ無形文化遺産に登録されました。三好市内には、「山城の鉦踊」「有瀬かぐら踊り」「祖谷音頭踊り」など情緒豊かな民俗芸能が現在でも継承されています。徳島県三好市を「風流の里」と見立て、風流踊の魅力を存分に味わえるイベントです。今年の夏は、「風流の里」を訪れてはいかがでしょうか?

●開催期間:2023年8月4日(金)~20日(日) 11:00~18:00

●開催:三好市交流拠点施設「真鍋屋」MINDE/大西神社境内(山城町栗山)

●入場無料

お問い合わせは、[email protected]

 

2023年02月16日

当財団が協賛しました「淡路人形座 -受け継がれる五百年の歴史ー」(令和4年11月27日 主催渋谷区)公演のダイジェスト版(渋谷区制作)がyoutubeでご覧いただけます。「淡路人形座」は、国の重要無形民俗文化財に指定された「淡路人形浄瑠璃」の伝承者です。兵庫県南あわじ市を拠点にご活躍されている淡路人形座の東京公演の模様をぜひ、ご覧下さい。尚、三味線を担当されている鶴澤友勇さんは、平成25年第33回伝統文化ポーラ賞地域賞をご受賞されています。

↓クリックしてご覧下さい。

(1) 伝承ホール民俗芸能公演 淡路人形座【10回記念】 - YouTube 

2023年01月27日

令和5年度の助成事業の申請書を2月1日~3月31日まで受付ます。

伝統工芸(技術)、伝統芸能、民俗芸能・行事の保存、振興事業に関する

助成を希望される個人・団体は、所定の助成申請書を期日までにご郵送下さい。

詳しくは、当財団HP「顕彰と助成」の「助成事業申請要領」ページをご覧下さい。

          ↓

https://www.polaculture.or.jp/promotion/jyoseiapply.html

 

2022年12月15日

 

 

長官③ 第42回伝統文化ポーラ賞贈呈式
第42回伝統文化ポーラ賞贈呈式を 令和4年12月13日(火) ザ・ペニンシュラ東京にて開催いたしました。

当日は、文化庁都倉俊一長官がお祝いの言葉を述べられ、また、地域賞受賞「秋田市太平山谷番楽保存会」の

子供たちの演技披露もあり、盛大に執り行われました。

受賞者の皆様を紹介する記念展「Birth それぞれの始まり」は12月18日(日)まで、ポーラ ミュージアム 

アネックスにて開催しております。記念展にも足をお運び下さい。

2022年10月27日

ポーラ伝統文化振興財団が企画した伝統文化記録映画「野村万作から萬斎、裕基へ」(制作:毎日映画社)が映文連アワード2022 ソーシャル・コミニケーション部門 優秀賞を受賞しましたのでお知らせいたします。

本年度は160作品の応募数の中から、2度の厳正なる審査を経て受賞が決定いたしました。

これで本作品は、「第23回ワールドメディアフェスティバル(ドイツ) パフォーミングアーツ部門金賞」、「教育映像祭『教養部門』最優秀作品賞(文部科学大臣賞)」に続いて、3つめの快挙となります。

映文連アワードとは、プロフェショナルの仕事に相応しい作品を積極的に発掘・顕彰することによって短編映画界の活性化を図るとともに次世代を担う新しい才能を発掘し、映像業界のインキュベーターとしての機能を担うことを目的に2007年に創設された短編映像祭です。

 

◇映文連アワードについてはコチラ↓

https://www.eibunren.or.jp/?p=5920

 

◇「野村万作から萬斎、裕基へ」の概要はコチラ↓

https://www.polaculture.or.jp/movie/index.html

 

◇伝統文化記録映画の無料貸出のご案内はコチラ↓

https://www.polaculture.or.jp/movie/rental.html

 

2018年10月30日

 

秋祭りシーズン真っ只中。

日本各地で五穀豊穣を感謝するお祭りが執り行われる。当神社も例外ではなく、毎年9月15日に例祭を、そして第3土日には「日本のふるさと遠野まつり」と合同で神輿渡御と流鏑馬、そして市内の郷土芸能総参加(本年は42団体)の馬場めぐりを行っており、本年は近年まれにみる快晴に恵まれ盛大に執り行うことができた。
一日市南部ばやし横
当神社例祭の最大の特徴はこの「馬場めぐり」である。もっと言うならば、馬場めぐりを行うことのできる広大な馬場を有していることである。これは1661年、青森県八戸から遠野に村替えした南部直栄が造営したものだ。南端は220m、最大幅50m、一周450mという広大な芝生馬場は、日本広しといえども全国に二か所しかない。そのもう一か所である島根県津和野の「鷲原八幡宮」の馬場と比べると、当神社の馬場の特徴がさらに際立つ。
遠野太神楽
鷲原八幡宮は1568年、津和野城主が鎌倉の鶴岡八幡宮の馬場を模して造営したものとされ、最も古い形を残すものとして県指定有形文化財にもなっているが、この馬場は、直線が235mと流鏑馬の定法に従って造営されているところは共通するも幅は約半分の23mしかなく、中央に土手を設けて馬がめぐる形になっている。対して当神社の馬場は、中央ではなく南端に土手を設け、中央は広場とし、その広場をめぐる形になっている。
境内の様子

馬場めぐりとは、当神社のお神輿を中心にして郷土芸能団体がこの馬場をめぐることを言う。1762年に書かれた『遠野古事記』にも「祭礼毎年九月十五日に御定、(中略)毎年祭礼には馬場を御廻り被成候(おめぐりなられそうろう)」と書かれており、造営当時より馬場をめぐっていたことが伺える。つまり、多くの観衆が広場に集まり、流鏑馬や郷土芸能などを見物できるように設計されているのである。

細越獅子踊り
これには理由がある。遠野南部氏が八戸から遠野へ引っ越してくる前、統治者不在の期間が長かったため遠野は荒れ放題だった。それを何とかするために南部直栄が注目したのが「お祭り」なのである。前述したように、領内の人々が集まることのできる馬場を整備し、流鏑馬を奉納させ、神楽やしし踊り、南部ばやしといった芸能を踊らせた。なぜかといえば、集まることによって、人々の不満や不安が解消されるからである。嫁に出した娘に会えるのは一年でもこの日だけだったのかもしれない。お互いの近況を語り合って盛り上がり、また来年の再会を誓う。そのような士農工商を超えた領民が一堂に会する交流の場こそ「遠野郷八幡宮例祭」であり、南部直栄の想いが今に息づいているのである。
東禅寺しし踊り 上組町南部ばやし
馬場めぐりにはもうひとつ注目すべき特徴がある。それは「右回りで三回めぐる」ということである。遠野地方では、葬式の数珠回しは左に回す。つまり左に回すことは魂を「解(ほど)く」ことを意味する。これが「ホトケ」の語源であり、その逆に右に回すことは「結ぶ」つまり神様からの御霊を我が体に定着させる意味があるのではというのが宮司の説である。この説の真偽はさておき、お祭りに参加した方々の晴れやかな表情を見ると、たしかに神様からのご加護を頂いているのだということを、私は毎年実感するのである。
露店の賑わい

遠野郷八幡宮  多田宜史

昭和55年生まれ。岩手県遠野市出身。

遠野市松崎町に鎮座する遠野郷八幡宮の社家に生まれる。
平成15年 皇學館大学文学部神道学科卒業
同年4月遠野郷八幡宮に奉職
 『遠野物語』や河童など、民俗学で有名な遠野に鎮座する神社の神職として、文化の伝承・保存に関心を持つ。

 

なお、本日ご寄稿いただいた多田先生の著書『教訓で読み解く 遠野物語』は書店他、Kindleの電子書籍でお買い求めいただけます。

多田 本

 

2018年04月26日

【工芸体験の感想レポート】

4月11日に弊財団職員が、前田正博先生の工房に、「転写紙色絵付け」の体験に行ってきました。前田正博先生は、平成29年度第37回伝統文化ポーラ賞「優秀賞」をご受賞された先生で、色絵磁器の第一人者としてご活躍されています。

転写紙色絵付け体験は、初心者でも楽しく陶芸制作が出来るように、前田先生が普及活動の一環として精力的に発信されている活動です。当日は、前田先生と、助手の佐々木文代先生のご指導のもと、時間を忘れて創作活動に打ち込むことができました。

先生のご活動は http://galleryjapan.com/locale/ja_JP/artist/520/ もしくは
https://www.facebook.com/mmporcelain/ からご覧になることができます。

木々の間からさす、眩い陽の光に目を細める時期となりました。伝統工芸や伝統芸能を観て楽しむだけではなく、実際に体験して楽しむのもいいですね。

Sakuhin_maeda    Sakuhin_maeda
前田正博先生   財団職員制作の器

2017年08月28日

《開催報告》8/20(日)「江戸からかみ体験ワークショップ&実演」(東京都江戸東京博物館)

8月20日(日)、江戸東京博物館常設展示室5階ミュージアム・ラボで、
ワークショップ「江戸時代の版木で、自分だけの江戸からかみを摺ってみよう!」と、
唐紙師(からかみし)の小泉幸雄さんによる江戸からかみの実演を実施いたしました。

■ワークショップ「江戸時代の版木で、自分だけの江戸からかみを摺ってみよう!」
  01ワークショップは午前と午後に1回ずつ開
催し、小泉幸雄さんとご子息の小泉哲推
(あきお)さんの手ほどきで、ご参加の皆さ
まに江戸からかみの木版手摺り(もくはん
てずり)の体験をしていただきました。併せ
て、江戸からかみ作品の鑑賞と歴史や道
具についての解説を行いました。

 

  
02 最初に、小泉幸雄さんに、江戸からかみの
襖紙(ふすまがみ)の木版摺りのお手本を見
せていただきました。
 全体に模様が広がる襖紙は、5回に分けて
木版摺りを行います。その際に少しも模様が
ずれないようにすること、模様に色ムラが出な
いようにするのが職人の腕の見せ所だそうです。

※写真は、顔料を塗った篩(ふるい)で、版
木に顔料を置いているところ。

摺り実演 小泉さんが手摺りで狂いなく、手早く、
美しい模様を紙に写し取っていく様子を、
参加者の皆さまは熱心にご覧になってい
ました。

※写真は、顔料を置いた版木に、紙を乗せ
て、紙の上から手で摺り、紙に模様を写しと
っているところ。


 03 匠の技にふれた後は、いよいよ自分の手
で挑戦する番です。小泉幸雄さん、哲推さ
んの細やかなご指導のもと、好きな模様の
版木を選んで、自分だけの江戸からかみを
摺っていただきました。

 ※写真は、小泉哲推さんから、篩に刷毛で
顔料を塗るのを教わっているところ。



摺り体験2 参加者の皆さまは戸惑いながらも、真剣
な面持ちで初めての木版摺りに取り組み、
摺り上がった江戸からかみを見て満足そう
な笑顔になられるのが印象的でした。

※写真は、小泉幸雄さんから、手摺りのコ
ツを教わっているところ。



体験住宅での解説 体験と同時進行で、隣接する体験住宅で
は、江戸からかみ協同組合の伴直道さんと
一緒に、江戸からかみ作品を見て、江戸か
らかみの歴史や、江戸からかみ作りの材料
・道具などについて勉強しました。

 参加者の皆さまは、お配りしたワークシー
トを使って熱心にメモを取り、興味津々の様
子で沢山の質問をなさっていました。

  1時間半にわたるワークショップで、制作工程や歴史、唐紙師の仕事に至るまで、
幅広く江戸からかみの伝統を学んでいただきました。仕上がった自分だけの江戸か
らかみ2枚もお持ち帰りいただき、参加者の皆さまに喜んでいただくことができました。


■小泉幸雄さんによる江戸からかみの実演  
無題 同日13時から14時には、小泉幸雄さんに
よる江戸からかみの実演も行いました。
 襖紙1枚を刷り上げる工程をご披露いただ
いた他、地紙に刷毛で色のグラデーションを
付ける「ぼかし染」や、櫛引き(くしびき)した
刷毛で細い縞模様を作る「丁子引き(ちょうじ
びき)」も見せていただきました。

※写真は、ぼかし染をしているところ。 

05 小泉さんの手で、真っ白な紙が彩られ、華
麗な模様が生み出されていく様子を、大勢の
お客さまが身を乗り出して、食い入るように
ご覧になっておられました。

※写真は、丁子引きをしているところ。
 




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 06 襖紙や壁紙、屏風や小物、書をしたためる
料紙など、人々の暮らしを豊かに彩ってきた
江戸からかみの伝統。今回の催しを通じて、
少しでも多くの方にその魅力がお伝えできて
いましたら幸いです。

 長時間にわたって、貴重な体験の機会を下
さいました小泉幸雄さん、哲推さん、どうもあ
りがとうございました。

 

 

 
※唐紙師 小泉幸雄さんプロフィール
07 昭和22年、東京生まれ。「江戸の名工」とい
われた幕末の唐紙師・小泉七五郎(しちごろ
う)から始まる江戸唐紙師の系譜を継ぎ、七
五郎の孫である小泉源次郎が創業した「唐
源(からげん)」の三代目を継承。平成13年に
経済産業大臣認定伝統工芸士、平成14年に
東京都知事認定伝統工芸士。
 関東大震災・戦災で膨大な量を失った江戸・
東京の版木の保存に尽力するなど、江戸からか
みの伝統継承に精力的に活動。江戸からかみ協同組合として第26回伝統文化ポーラ賞地域賞受賞。
 平成22年には「東京都優秀技能者(東京マイスター)知事賞」を受賞。小泉さんによる手摺りの江戸から
かみは、美術工芸品や建造物などの文化財の保存に欠かせない材料となっており、平成29年に国選定保
存技術「唐紙製作」の保持者に認定されることが決定した。


※本企画主催:東京都江戸東京博物館 公式ページ
※本企画協力:江戸からかみ協同組合 公式ページ
※特別協力:公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団
  (江戸からかみ協同組合は、第26回伝統文化ポーラ賞地域賞の受賞者です)

2017年08月25日

山形県米沢市で2017年8月5日に行われた、公益財団法人 ポーラ伝統文化振興財団共催の
「第30回 農村文化ゼミナール」が終了いたしました。
このゼミナールは、公益財団法人農村文化研究所が主催でおこなっているもので、
人々の生活の中での祭りや信仰、モノ作りについて有識者から学ぶ集まりです。第30回目は、記念公演として、「人づくり まちづくり」をテーマにし、開催されました。
その中で、「日本のモノづくり」の紹介として、弊財団の記録映画、
『手の匠‐日本文化をうみだすもの‐』の上映がなされました。
約80名の来場者は、始終目をスクリーンに釘付けにし、工芸作家や縁者たちが、
「日本の美」を生み出す瞬間を楽しみながら鑑賞する様子が見受けられました。
ある来場者は、

「工芸品が好きでよく美術館に見に行く。これまでは完成しているものしか見たことが無かったが、
映画を見て、あーこういう風に作ってるんだな、とか作家の気持ちとかが分かった。
これからは(美術館などに)行ったとき、違う視点でみられそう。」

などと感想を伝えてくださいました。

 

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米沢では、2017年12月10日に、伝統技法である「原方刺し子」の体験ワークッショップも行います。
詳細については近日公開予定ですので、どうぞお楽しみに。

遠藤きよ子氏

原方刺し子・・・武士の妻たちが、貧しさの中で布に糸を刺すことで、丈夫に長持ちするようにと刺し子を施したことが始まりです。家禄を失い、田畑を開墾しながらも武士としての気概だけは忘れない!「上杉藩下級武士の妻たちが狂ったような貧しさに居直り、士族の誇りを失わずに身構えた執念の業」それが原方刺し子です。  

2017年07月18日

《開催報告》 7/8(土)第2回映画上映会・講演会「人・社・祭 ― 文化風土の記録」(國學院大學)

7月8日(土)14時から17時半まで、國學院大學渋谷キャンパスにて、平成29年度第2回映画上映会・講演会
「人・社・祭 ― 文化風土の記録」を開催しました。
今回は、昨年末に18府県33件の祭りで構成する「山・鉾・屋台行事」がユネスコ無形文化遺産に登録された
ことを記念して、その中の2件「長浜曳山まつり」と「秩父夜祭」をご紹介するというものでした。
おかげさまで当日は200名を超えるお客様にお越しいただき、盛況のなかで会を進行させていただくことができま
した。

▼開会の挨拶(写真は当財団理事長の小西尚子)
P70804462國學院大學と共催してきた本講演会も、おかげ
さまで今年で10年目を迎えることができました。










▼やまの部「秩父の夜祭り」映画上映・講演
四方を山に囲まれた盆地ゆえに近代化の波を受けず、今でも数多くの伝統の祭り行事を残す秩父。その最
大の祭りが、昨年末にユネスコ無形文化遺産に登録された、「秩父夜祭」です。
今回は、その全容を、当財団の記録映画「秩父の夜祭り-山波の音が聞こえる-」など、2つの映像を通じ
てじっくりご紹介した後、「秩父夜祭」を行う秩父神社宮司の薗田稔先生からお話をいただき、日本の祭りの
意義や、祭りや地域の歴史・文化を大切にした地場産業や地域づくりの大切さを学びました。
P70804512薗田先生によると、日本のコミュニティはまわり
の自然風土と一体であるのが特徴で、祭りは山
や里や川や海をつなぐものです。
そして、祭りは地元の誇りとなって、祭りの度に
人々をふるさとに呼び戻す、コミュニティの結集
に大切なものだそうです。
また、祭りにあわせて人が集まり、市が出て物
の交換が行われるなど、昔から祭りは商業と結
びつきながら地域の活性化に貢献してきたのだ
と薗田先生のお話から教えていただきました。


▼うみの部「長浜曳山まつり」映画上映・講演
琵琶湖北部に位置する城下町・長浜で、400年の歴史を誇る「長浜曳山まつり」。長浜城主の羽柴秀吉
(のちの豊臣秀吉)が息子誕生を喜んで祝いの砂金を振る舞い、城下の人々がそれを元に曳山を作った
のが始まりと伝えられています。
今回は、2000年10月開館以来、曳山実物の常設展示に加え、曳山修理や義太夫や三味線などまつりに
欠かせない技の伝承の大切さも伝えてきた長浜市曳山博物館より、無形文化遺産登録時に館長を務め
た中島誠一先生(現在はご退職、成安造形大学ほか非常勤講師)をお呼びしました。
P70804612最初に、中島先生の知る町の人が大勢出演し
ているという記録映画「-琵琶湖・長浜-曳山
まつり」を上映しました。「長浜曳山まつり」は、
曳山の舞台でこども役者が演じる「こども歌舞
伎」が特徴です。
映画には、懸命に技を磨くこどもたち、熱心に指
導する若衆たち、一丸となって見守る町の様子
が写され、祭り当日の晴れ舞台までを描きます。
P70804862

続く、講演テーマは「有形と無形の絶妙なるハー
モニー」。中島先生によると、長浜の曳山は地元
伝統の仏壇や他地域の名工による飾金具など工
芸技術の結集で、長浜モデルの曳山は周辺地域
に広がりました。また、「長浜曳山まつり」は周辺か
ら参加者を受け入れるなど、ローカルでありなが
ら、グローバルな祭りであったのだそうです。
無形文化遺産登録33件の中で数少ない本格的
な祭礼博物館を持つ点では、博物館が有形文
化財の調査・保全に加え、長浜の歴史文化を
教えて地域の誇りを醸成する場となり、さらに、祭りを担う山組と行政の仲介者且つ祭りの当人として、
「長浜曳山まつり」の有形無形の伝承の要となるべきとの考えを示されました。

▼質問に答える講師のお二人(左:薗田稔先生、右:中島誠一先生)
P70804962会の最後には、来場者から講師のお二人に質
問が寄せられました。










次回の共催講演会は、10月14日(土)14時から、國學院大學渋谷キャンパスにて、原正利先生を講師に
お迎えして「ブナの木と社叢」をテーマにお話いただく予定です。
会場など詳細が決まり次第、またご案内いたしますので、ぜひご参加くださいませ。


【ご講演者の関連リンク】
※秩父神社公式ページはこちら
※長浜市曳山博物館公式ページはこちら

2017年05月17日

 

ポーラ伝統文化振興財団と神奈川大学国際センターの共催企画として、日本文化プログラム
「留学生活で民俗芸能を活用する‐山・鉾・屋台行事を通してみる日本文化‐」を開催しました。

 

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本企画は財団初の試みとして、これから海外に留学する日本人学生と、海外から日本に留学にきている学生
に対して、記録映画の上映と、それに関わる講演を行いました。

 


日本の文化を知り留学に望むことで、自文化の再確認や、多様性を養う

好機となることを目的としています。

 

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講師の川﨑瑞穂先生(国立音楽大学助手・音楽学博士)からは、日本文化の「祭り」に関して、実際の映像をみせて頂きながら、
豊かな日本文化の様相についてご紹介いただきました。

「能」や「歌舞伎」だけではない、日本固有の民俗芸能を知ってもらうことで、
日本文化に関する理解の深化を図ることができました。また、川﨑先生ご自身も
パリ大学への留学経験があることから、海外で日本文化を紹介する際のヒントや注意点についてもお話くださいました。

学生の方の声についてご紹介いたします。

「民俗芸能全体について知ることができて良かったです。内容が多かったので、
付いていくのが大変でしたが、とても分かりやすかったです。」

「民俗芸能というものをあまり知らなく、またどこかの時代のものかと思っていた。
しかし、沢山の時代のものが融合して、新しいものが入っていることに驚いた。
また、神奈川にも多く伝統文化が多く残っているんだな、と感じた。」

「歌舞伎や能など、世界的にも有名なものについては知る機会が多々ありましたが、
民俗芸能について詳しく説明を聞いたのははじめてだったので、とても興味深かったです。
実際の映像を沢山見ることができたので、すごく面白かったです。」

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「私も今年の9月にフランスのモンペリエの方へ留学することになっています。
日本文化について、まだまだ知らないこともあったし、留学の際に役立つことについて
知ることができました。自分も地域の祭りに参加して、
この知識が留学したときに伝えられたらいいなと思いました。」

 「ポーラは化粧品会社だと思っていたのに、伝統文化もやっていて、すごいと思った。
ポーラの解説で、心もきれいにしていくためにやっている、と言っていたが、すごく素晴らしいと思った。
講義もおもしろかった。」

 

この企画は全4回行われます。これから世界に羽ばたいてゆく学生に向け、伝統文化を発信してゆくことは、
 文化の国際交流を進めていく大切な一端を担う事業です。

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ポーラ伝統文化振興財団はこれからも伝統文化の発展のため、活動を広げてゆきます。

 

2017年04月25日

《開催報告》 4/22(土)第1回映画上映会・講演会「人・社・祭 ― 文化風土の記録」(國學院大學)

4月22日(土)14時から16時半頃まで、今年度初回の國學院大學との共催映画上映会・講演会を、
國學院大學渋谷キャンパスにて開催いたしました。

今回は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えて、
日本文化をうみだす手に注目する記録映画の上映と、石川幹子先生(日本のランドスケープ・アーキテクト、
中央大学理工学部教授、東京大学名誉教授)によるオリンピック会場の神宮外苑に杜を実現する計画
についてお話をうかがいました。

①映画上映「手の匠-日本文化をうみだすもの-」
P4221550日本文化に占める「手」の意義と魅力を考えると、
日本文化の美しさを築く上で、手が大事な役割を
果たしてきたことに気付かされます。
例えば、匠の手わざが、蒔絵(まきえ)の美しい文
様や陶芸の繊細なフォルムを作り上げ、人形遣い
の手が人形に命を吹き込み、人形浄瑠璃の情念
の世界を表現します。
茶を立てる手はおもてなしの心を伝え、千手観音
像の手は人々への救いの心を表します。


東京オリンピックに向け、日本文化のことを考える機会が増えてきた今、
私たちの手、日本文化をうみだす手に、改めて注目してはいかがでしょうか。


②講演「神宮外苑の過去・現在・未来、オリンピック2020に向けて
     ―大地に根差した『本物の杜』の実現のために―」
P4221589講演では日本学術会議で石川幹子先生が発表
された、「神宮外苑の歴史を踏まえた新国立競
技場整備への提言」について報告していただき
ました。
新国立競技場は、当初のザハ・ハディッド氏の
案から、隈研吾氏の案へと変更されました。
石川先生によれば、案変更に伴い、神宮外苑
の歴史や環境に配慮した計画になると期待さ
れましたが、状況は期待通りには進展していな
いそうです。

この状況に対し、石川先生は「神宮外苑の新国立競技場周辺地域の
整備にあたっては、神宮外苑の歴史と生態系を踏まえた「本物の杜」を
再生していく」という考えを表明されていました。

次回の共催講演会は、7月8日(土)14時から、國學院大學渋谷キャンパスにて、
「「山・鉾・屋台行事」のユネスコ無形文化遺産登録記念―長浜曳山まつり・秩父の夜祭り上映講演会―」
を開催する予定です。
次回は、ユネスコ無形文化遺産に登録されたばかりの2つのお祭り当事者をゲストに、
文化遺産登録に向けて行ってきた取組みや今後についてお話をうかがいます。
会場など詳細が決まり次第、またお知らせいたしますので、楽しみにお待ちくださいませ。

2017年04月10日

世界には様々な人形芝居があります。フランスの「マリオネット」、インドネシアの「ワヤン」など、
様々な国で人形芝居が楽しまれています。もちろん日本でも人形芝居は、昔から親しまれてきました。
一言に「人形芝居」と言っても、その種類は様々ですが、今回は2017年4月8・9日に、
長野県飯田市黒田人形浄瑠璃の奉納公演を拝見したので、ご報告いたします。

人形浄瑠璃とは、文楽とも呼ばれる芸能で、江戸時代に大阪で発展した伝統芸能です。
実はこの「文楽」というのは、この芸能を創った「植村 文楽軒」(うえむら ぶんらくけん)
という人の名前からきています。では、文楽が人の名前からきているのなら、「浄瑠璃」とは
何なのでしょうか。「浄瑠璃」とは、《浄瑠璃姫十二段草紙》(じょうるりひめじゅうにだんぞうし)
という語り物から来ているといわれています。太棹三味線を使用した力強い音楽を持つ語り物が
人気を博し、同じ節回しをもって語られる人形劇が「浄瑠璃」と呼ばれるようになったと言われています。

さて、今回拝見した黒田人形浄瑠璃ですが、今から約300年前(元禄時代)に、正岳真海という僧侶が
義太夫・三味線・人形等の遊芸を黒田の人々に教えたことが始まりだと言われています 。
以来、人々の弛まぬ熱意によって伝承が続いた人形公演は、現代においても人々に愛され続けていました。
黒田人形は、昭和50年に国の無形文化財に選択され、その後、飯田市無形文化財にも指定された歴史の深い人形公演です。
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まず上演されたのは、《寿三番叟》(ことぶきさんばそう)です。《三番叟》は元々、能で演じられる演目ですが、
黒田人形ではユーモラスな人形が舞台全体を大きく使い会場を沸かせていました。
《寿三番叟》は「場を清める」という役目を持つ演目で、日本では古くから「新しく場を開くとき」
「神聖な場に神を下ろすとき」に舞われました。しかし、黒田人形はそれだけでは終わりません。
演目の後半では、翁が腰を振ったり、突き上げたり…といった表現もされて会場はさらに沸き立ちます。
おどけた翁の動作は続きますが、目くじらを立てる人はいません。なぜかと言うと、
この翁の動作は予祝儀礼であり、春に種を蒔きそれが青々と茂り、やがて秋には豊満な実となるように、
祈りが込められているからです。

 《寿三番叟》によって場が清められた後は、《三十三間堂 棟由来 平太郎住家より木遣音頭の段》
《傾城阿波の鳴門 巡礼歌の段》《鎌倉三代記 三浦別れの段》が上演されました。
時に勇ましく、時に儚げに上演される黒田人形ですが、大人だけではなく、中学生の頑張りも光る舞台でした。
《傾城阿波の鳴門 巡礼歌の段》は地元の高陵中学校人形座が務めました。ベテラン勢に支えられながらも、
危なげなく演じきった生徒の皆さんへは、喝采の拍手と、下黒田諏訪神社氏子さま達からの御ひねりが飛び交っていました。

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以下に公演情報を記載します。今年は終了してしまいましたが、ご興味のある方は来年の公演に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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公演情報(2017年情報)
日時:4月8日(宵祭り)午後18時開演 ・ 9日(本祭り)午後13時開演
会場:下飯田諏訪神社境内 人形専用舞台
住所:長野県飯田市上郷黒田2344
公演された演目:
《寿三番叟》《三十三間堂 棟由来 平太郎住家より木遣音頭の段》
《傾城阿波の鳴門 巡礼歌の段》《鎌倉三代記 三浦別れの段》
両日とも、甘酒とおでんが用意されていました。

※黒田人形は第22回ポーラ賞地域賞受賞者です。
http://www.polaculture.or.jp/promotion/year.html
※黒田人形については弊財団機関誌『伝統と文化』第34号で特集いたしました。(http://www.polaculture.or.jp/gallery/magazine.html#dentobunka

2017年03月22日

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開催レポート
淡路人形座―受け継がれる五〇〇年の歴史―
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主催:渋谷区
協賛:公益財団法人 ポーラ伝統文化振興財団

3月5日(日)、渋谷区文化総合センター大和田にて「淡路人形座―受け継がれる五〇〇年の歴史―」
を開催いたしました。
淡路人形座は、兵庫県南あわじ市を拠点に、500年の歴史を誇る淡路人形浄瑠璃の芸を受け継いで
いる人形座で、これまで日本各地や世界28カ国にて公演を行ってきました。淡路人形浄瑠璃は、義太
夫節による三人遣いの人形芝居で、1976年に国の重要無形民俗文化財に指定されています。
本公演では、「戎舞(えびすまい)」と「壺坂霊験記(つぼさかれいげんき) 山の段」の2演目に加え、演
目の間には人形浄瑠璃を支える人形遣い(にんぎょうつかい)、太夫(たゆう)、三味線の三役による解
説コーナーもありました。

P3051249■「戎舞」
庄屋の主人から御神酒をふるまわれる戎様。
ご来場のお客様に感謝して1杯、渋谷区の発
展を祈念してさらに1杯。
ユニークな祈りの言葉や、酔いの進んだ戎様
の様子に、会場からは笑みがこぼれました。

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■ 解説コーナー
人形1人ひとりに感情を吹き込むのが太夫の
役目。
来場者も太夫になりきって一斉に「へへへへ
へへ。ほほほほほほ。」と笑いを吹き込む練習。
他にも、人形遣い体験では3名の来場者が人
形遣いに奮闘し、三味線解説では三味線弾き
がこんな風に弾いてしまったらという再現演技
が行われ、会場を大いに盛り上げました。P3051357

■「壺坂霊験記 山の段」
目の見えない沢市と彼を支える女房お里の夫
婦愛を描く人気作。
冒頭で、お里が内職のお針仕事をする場面で
は、人形のお里が本当に縫い物をしているか
のような巧みな動きに、会場からは驚きと感嘆
の声があがりました。
その後も、すっかり芝居に引き込まれ、最後は
感動とともに、長く大きな拍手が会場全体を包
みました。

大盛況に終わった今回の淡路人形座の公演ですが、もう一度ご覧になりたい方、すっかりファンになられ
たという方は、南あわじ市にある本拠地、淡路人形座(兵庫県南あわじ市福良甲1528-1地先)にぜひお越
し下さいませ。また、関東にお住まいの方にはご朗報がございます。5月20日には草加市文化会館ホール
でも開催予定とのことですので、ぜひそちらにも足をお運びください。

※淡路人形座公式ホームページはこちら(公演情報もございます)
http://awajiningyoza.com/
※淡路人形座、三味線の鶴澤友勇さんは、第33回伝統文化ポーラ賞地域賞受賞者です。  http://www.polaculture.or.jp/promotion/thickbox/parson_data33_06.html?sc=_map

2017年02月22日

今年度5回目となる國學院大學との共催講演会が、2月18日(土)14時から16時半頃まで、
國學院大學渋谷キャンパスにて開催されました。昨年、平成28年は諏訪の御柱祭の開催年
だったということで、今回はその「諏訪の御柱祭」をテーマに取り上げました。

最初の講演では、司会の茂木 栄先生より「諏訪大社の祭り」についてご説明いただきました。
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諏訪大社(すわたいしゃ)は、長野県諏訪湖周辺に上社(前宮、本宮)と下社(春宮、秋宮)の
4箇所の境内地をもつ神社で、全国各地にある諏訪神社の総本社です。ご祭神である諏訪明
神は、古くは風・水の守護神で五穀豊穣を祈る神、そして狩猟の神、武勇の神として知られて
います。武家社会にて広く人々の信仰を集め、諏訪地域から全国へと信仰の範囲が広がりま
した。諏訪大社には御頭祭(おんとうさい)や遷座祭(せんざさい)などの恒例神事があります
が、実は諏訪大社の神事には南方的要素があると指摘されており、諏訪信仰は諏訪地域だ
けでなく広く九州まで含めて考えるべきとのことでした。

続いて、映像「諏訪の信仰と関連映像」(長野県下諏訪町教育委員会)を上映し、その後で
薗田 稔先生(秩父神社宮司、京都大学名誉教授)に解説をしていただきました。

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諏訪大社の最大行事である御柱祭(おんばしらまつり)は、7年毎の寅と申の年に行われる神
事で、宝殿の建替と、宝殿の四隅に建てる「御柱(おんばしら)」と呼ばれる樹齢200年程のモミ
の巨木を選び、山から境内まで曳いてくる一連の行事を指します。
講演参加者は、映像を通じて、荒ぶる山の神を里に降ろし、里を守る温和な神へと変身させる
祭りの全行程を追体験し、荒々しい祭りと祭りにかける人々の熱気を感じることができました。
そして、薗田先生の解説では、なぜ諏訪の人々はあれほどまでに荒々しく危険な御柱祭を行う
のかという疑問に対し、日本の祭りが地元の風土や神話に基づくものであり、諏訪の場合は人
々を取り巻く諏訪盆地の風土と、自然や木を霊的なものとして信仰する文化があることを教えて
いただきました。

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平成28年度の共催講演会は今回で最後となりました。沢山の方のご来場、どうもありがとうござ
いました。次年度の開催日につきましては、詳細が決まり次第、改めてお知らせいたします。
申し込み不要で参加無料ですので、引き続きのご来場をお待ちしております。

※ イベント情報をお届け!ポーラ伝統文化振興財団メールマガジンご登録はこちら
http://www.polaculture.or.jp/mailmagazine.html

2016年12月12日

 《共催イベント・レポ》 12/10 講演会「人・社・祭 ― 文化風土の記録」第4回 開催レポート

今年度4回目となる國學院大學との共催講演会が、12月10日(土)14時から16時頃まで、
國學院大學渋谷キャンパスにて開催されました。
第一部ではポーラ伝統文化振興財団の顕彰活動より「中江岩戸神楽」紹介映像の上映、
第二部では北畠能房氏(小松天満宮宮司、京都大学名誉教授)による講演「河川改修と
鎮守の森保全のかかわりから学ぶこと」が行われました。

まず、第一部では、本イベント共催者として9年間にわたり伝統文化記録映画を上映してき
た当財団の多様な事業活動について知っていただく機会として、伝統文化ポーラ賞という
顕彰事業のご紹介をさせていただきました。
伝統文化ポーラ賞は日本の無形の伝統文化を支えてこられた方々を伝統工芸、伝統芸能、
民俗芸能・行事の各分野から見出して顕彰するものです。36年間で28名もの方が、伝統文
化ポーラ賞受賞後に人間国宝になるなど、伝統文化の担い手支援に貢献してきました。
その中で今回は、今年の伝統文化ポーラ賞地域賞を受賞した熊本県の中江岩戸神楽保存
会の紹介映像を上映し、司会の茂木栄先生(國學院大學)より中江岩戸神楽の解説をして
いただきました。
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続く第二部では、石川県にある小松天満宮宮司の北畠氏より、天満宮に隣接する梯川(かけ
はしがわ)の河川改修と天満宮周辺の鎮守の森保全との関わりについて、詳細な事例紹介
をしていただきました。
梯川の河川改修は、国指定重要文化財である小松天満宮の移転を回避し、天満宮周辺を
浮島化させることで河川改修を進めるというものでした。しかし、計画実施は一筋縄ではいか
ず、河川改修計画の転向や河川法改正といった行政側の動きと連動して、北畠氏らは天満
宮の立地をはじめとする文化的価値の証明や河川改修工事が鎮守の森に与える影響調査
などを行うことで、重要文化財である天満宮と鎮守の森の保全に努めてきたそうです。
当事者である北畠氏から語られる報告に、参加者は聞き入り、講演後は熱心な質問が寄せ
られました。
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次回の共催講演会は、2月18日(土)14時から、國學院大學渋谷キャンパスにて、
テーマは「諏訪大社の御柱祭」を予定しています。
上映作品など詳細が決まり次第、またお知らせいたします。
申し込み不要で参加無料ですので、より多くの方のご来場をお待ちしており ます。

2016年10月11日

 《共催イベント・レポ》 10/8 講演会「人・社・祭 ― 文化風土の記録」第3回 開催レポート

今年度3回目となる國學院大學との共催講演会が、10月8日(土)14時から16時頃まで、
國學院大學渋谷キャンパスにて開催されました。
今回のテーマは「鎮守の森・自然エネルギープロジェクト」ということで、まず小池哲司氏
(千葉エコ・エネルギー株式会社マネージャー・鎮守の森コミュニティ研究所研究員)から
お話をいただき、その後NPO法人社叢学会制作の映画「森を作る話」を上映しました。

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小池氏の講演「「エネルギー」と「地域」をつなぐ鎮守の森」では、「鎮守の森」と「自然エネ
ルギー」を結びつけるものはあるかという切り口から議論が展開し、特に小水力発電に着
目して、神社が地域での水利用の合意形成の中核としてエネルギー事業を行い、そこで
得た利益を地域に還元するという新しい事業モデルが提案されました。
小池氏の提案に対し、来場者は様々な意見をお持ちになったようで、鎮守の森は神様の
ものなので、エネルギー事業の実施には神様のためになるものという説明が必要だといっ
た意見や、新たな視点に驚いたり賛同する声などが寄せられました。

続く、映画上映「森を作る話」は、愛・地球博で上映された17分ほどの作品を鑑賞しました。
作中では広島の爆心地で焼かれた鎮守の森を再生する話や、北海道のえりも町での緑化
事業、気仙沼の漁民による山への植樹活動などが紹介され、戦後の日本での多様な森作
りの事例から、失った森を再生することの大変さ、森の大切さを学びました。

次回は、12月10日(土)14時から、國學院大學渋谷キャンパスにて、
テーマは「鎮守の森の移転計画と県境保全」を予定しています。
上映作品など詳細が決まり次第、またお知らせいたします。
申し込み不要で参加無料ですので、より多くの方のご来場をお待ちしており ます。

2016年08月29日

8月25日(木)、会津本郷焼「宗像窯」を訪れ、今年の『伝統文化ポーラ賞』地域賞受賞の
宗像利浩さんにご挨拶をさせていただきました。

会津本郷焼は、東北地方最古の窯業地とされる福島県会津美里町で生産されてきた
焼き物で、その起こりは戦国時代まで遡ります。
宗像さんは、会津美里の地で300年続く宗像窯の八代目当主として、会津本郷焼の伝統
を継承し、父祖伝来の皿や鉢、壺などの伝統的な器づくりに携わる一方、日本陶芸展で
準大賞を受賞した「利鉢(としばち)」をはじめとする新しい会津本郷焼の制作に取り組ん
でこられました。

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「禾目利鉢(のぎめとしばち)」(宗像窯HPより)

今回の訪問では、宗像さんへのインタビューのほか、工房にて作陶実演や技法・道具の説明も
していただきました。

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これは、 宗像さんが作陶するロクロ。
赤い敷物の上に腰掛け、左右の穴に足を
下ろして、前方のロクロに向き合います。
ロクロの上には地元白鳳山の的場陶土。
それが宗像さんの手で、すっと伸び、みる
みるうちに器の形に成形されていきます。

 

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これは、左から小刀、鉄カンナ、木カンナ。
形成された器は、形が動かない程度に乾燥
させた後、ロクロにすえて、高台(こうだい/
器の裏にある卓に接する台)を削ります。
昔から柔らかめの土の時、木で削ってきた
経験から鉄カンナを工夫して使うと高台は
ささくれ、味わい深くなるそうです。

この後、器が完全に乾いてから釉薬をかけ、窯での焼成、窯出しを経て、作品が出来上がります。


ここまでお読みになり、実際に宗像さんの作品をご覧になりたくなられた方へ、
嬉しいお知らせがあります。
宗像さんは今年が作陶40年の節目にあたり、以下の日程で大々的な個展を開催されます。
詳細が明らかになりましたら、改めてお知らせいたしますので楽しみにお待ちください。

■「作陶四十年 宗像窯八代 宗像 利浩 展」
2016年11月23日(水)~29日(火) 日本橋高島屋 美術画廊
2016年12月21日(水)~31日(土) 高島屋大阪店 美術画廊

また、会津美里町の宗像窯には、宗像さんとご子息の利訓さんの作品が見られる展示場が
ございますので、ぜひ足をお運びください。


最後に、執筆にあたりご協力いただいた宗像利浩さん、宗像窯の皆様に御礼申し上げます。


※宗像利浩さんは、第36回伝統文化ポーラ賞地域賞受賞者(平成28年)です。
http://www.polaculture.or.jp/promotion/current.html
※宗像窯公式ページはこちら
http://www.munakatagama.net/index.html
※会津美里町公式ページ「特産品 会津本郷焼」はこちら
http://www.town.aizumisato.fukushima.jp/s024/008/010/020/20151219155032.html

2016年07月11日

《共催イベント・レポ》 7/9 講演会「人・社・祭 ― 文化風土の記録」第2回 開催レポート

 今年度2回目となる國學院大學との共催講演会が、7月9日(土)14時から16時頃まで、
國學院大學渋谷キャンパスにて開催されました。今回は雨日にも関わらず、120名もの方々
にご参加いただきました。今回のテーマは「熊野那智の信仰文化」。熊野信仰の拠点として
知られる熊野三山の1つ、熊野那智大社(和歌山県)の信仰文化について、映画鑑賞と
講演を通じて学んでいただきました。

 はじめに、当財団の記録映画「炎が舞う-那智の火祭り」を上映し、熊野那智大社に
おいて伝承されてきた例大祭について、その由来や、扇神輿作りや田楽の練習といった
準備段階、雄大な自然の中で繰り広げられる祭り当日の全行程までを把握していただき
ました。
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 続く講演は、石倉孝祐氏(北区飛鳥山博物館・学芸員)から、ぐっと学術的な見地で
「熊野那智参詣曼荼羅の宗教的世界観」に関するお話をいただきました。熊野那智参
詣曼荼羅(くまのなちさんけいまんだら)は、熊野那智への参詣を勧める宗教絵画で、
その成立背景には熊野那智の寺社建て替え資金の調達という目的があったそうです。
那智参詣曼荼羅の特徴として、様々な身分の人が1つの絵に描かれていること、豊穣
と死そして再生の様子が描かれていることが挙げられ、絵解きを通じてその教えが全
国に広められていたそうです。
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 熊野那智の信仰を広めるものとして熊野那智参詣曼荼羅が存在し、その信仰が現
在まで続いた結果として私達が毎年7月14日に目にする那智の火祭りがあります。
講演に参加された方も、そうでない方も、もしよろしければ今年の那智の火祭りに参加
し、実際に現代に息づく熊野信仰を体感なさってください。
※ 熊野那智大社公式ページ「那智の扇祭りのご案内」はこちら
http://www.kumanonachitaisha.or.jp/

 次回は、10月8日(土)14時から、國學院大學渋谷キャンパスにて、テーマは「鎮守の
森①エネルギー」を予定しています。上映作品など詳細が決まり次第、またお知らせい
たします。申し込み不要で参加無料ですので、より多くの方のご来場をお待ちしており
ます。また、上映の記録映画をご覧になりたい方がおられましたら、当財団では個人・
団体を問わず全ての方に、映画(DVD, VHS, 16mm)の無料貸出を行っていますので、
こちらもぜひご利用ください。

※ 記録映画無料貸出のご案内はこちら
http://www.polaculture.or.jp/movie/rental.html
※ 記録映画「炎が舞う-那智の火祭り」のご紹介はこちら
http://www.polaculture.or.jp/movie/thickbox/tab03_015.html?sc=_map

2016年04月28日

 【和をつなぐメッセージ】第17回 八重樫榮吉さん(仙台簞笥金具職人) 

 

いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、

そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、

共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。

和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

第17回は、仙台簞笥金具職人の八重樫榮吉さんからの和をつなぐメッセージです。

 

<八重樫榮吉 Yaegashi Eikichi プロフィール>

2801_0011936年生まれ

1979年 仙台市商工会議所功績賞

1995年 仙台市功労賞

2003年 伝統的工芸品産業功労者褒賞

2005年 伝統文化ポーラ賞地域賞

2010年 宮城県物産振興協会優秀技能賞受賞

2013年 宮城県卓越技能者表彰(宮城の名工)

2015年 労働大臣卓越技能者表彰(現代の名工)

2016年 内閣 平成28年 桜を見る会招待

 

①最近のお仕事で印象に残っていること。

昨年、平成27年3月に仙台市博物館で開催されました国連防災世界会議で仙台簞笥の展示と実演を行ったことです。外国の人向けに行われた実演で、龍、唐獅子、子供地蔵などの意匠を用いた金具づくりの実演をしました。様々な国から様々な人たちがきてくれて、好みも様々で作り手としてもおもしろい経験をさせていただきました。
私の工房では、お客様の要望を聞いて、一品ものの意匠を作ります。だから、このように多くの人たちの刺激を受けると、次の創作への刺激になります。

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龍文簞笥

 

②この道を歩もうと決心したのは、何歳のとき、どのようなきっかけでしたか?

20歳のとき。

私は、9人兄弟のいちばん末っ子。幼い頃から家業であった仙台簞笥の金具を作る父の仕事を見て育ちましたが、反抗ばかりしていました。学校の先生の紹介で卒業後はホテルの住み込みの料理人になり、4年間働きに働いて、就職後初めて家に帰ったとき父に「この仕事、お前に一番向いているんだけどやってみないか」と言われました。

久しぶりに見た父はずいぶんと年老いたように見えて、その後ろ姿は泣いていたように見えたことを、いまでも覚えています。でも、まだ決心はつかなかった。それからしばらく経ってから、父に頼まれて植木屋さんへ行きました。立派な盆栽がたくさんあって眺めていると、そこのご主人が「これらの盆栽は、みんな一代でできるわけではないのですよ。何代もかけて、このような盆栽になるのです」と教えてくれました。その言葉に私は非常に感銘を受けました。「自分もこんなふうに、時代を越えてつないでいける仕事をやってみたい」と。そして私は家業を手伝うことを決心しました。そこのご主人は、帰るときに松の盆栽をひとつくれました。その植木屋さんとは、いまでも親交があります。そして私がオリジナルの意匠を作るヒントは、みんな山野草が教えてくれました。スミレ、イワシバ、イワカガミなど、いままで意匠化したのは数え切れないほどです。

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小簞笥 牡丹文

 

③座右の銘は。

ものづくりとは、つねに自分との戦いである。

 

④伝統文化を未来につなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか?

宮城県内の高校で展示、実演と話合いをしています。

また、年に数回、民俗史料館で展示、実演を行い、多くの方々に見ていただき、ふれていただく機会をもうけています。

 

⑤和をつなぐメッセージリレー

伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。

 

☆第17回は鶴澤友勇さんから八重樫榮吉さんへのご質問

作品をインターネットで見せていただき、胸がドキドキするほど感動しました。本も見せていただきました。このような素晴らしい伝統をぜひ、後世にも伝えてほしいです。
伝承される方はいらっしゃいますか?又、どのような精神を伝えていきたいと思われますか?

 

☆八重樫榮吉さんからのご回答

弟子はおりませんが、高校で講師を勤めるなど、若い人たちに見てもらう機会を大切にしています。
手わざは繊細で細やかな表現ができると思います。そして、やはり迫力が違います。これは、機械では表現できないと思っています。ぜひ一度、ご覧になってみてください。

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4尺仙台簞笥の観音につける龍紋金具(30cm)の制作中です

2016年04月26日

《共催イベント・レポート》 4/23 第1回 講演会「人・社・祭 ― 文化風土の記録」

当財団が例年、國學院大學、NPO法人社叢学会と共催している
講演会「人・社・祭 ― 文化風土の記録」の第1回が、4月23日(土)14時から17時頃まで、
國學院大學渋谷キャンパスにて開催されました。
今回は「庭・公園・都市公園」をテーマに、当財団の記録映画「狂言師・三宅藤九郎」の上映と、
高橋康夫氏(東京都公園協会緑と水の市民カレッジ事務局長)による
講演「東京の都市公園の始まりから今日まで」を行いました。
毎回、学生さんや社叢学会関係者に限らず、多くの方にご参加いただいておりますが、
今回も85名に及ぶ方々がお集まりになりました。

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今回上映の記録映画は、庭の芸から始まった狂言の歴史に着目し、
「狂言師・三宅藤九郎」を上映しました。
狂言は平安時代に申楽(さるがく)と呼ばれた滑稽な物真似を見せる大衆芸能から生まれたと伝わり、
武家社会の幽玄な能に比べて、庶民的で品位の低いものとみられる傾向がありました。
今回の映画では、明治・大正・昭和の長きにわたり、狂言を能から自立させ、狂言の格を主張するべく、
ひたむきに芸を磨き続けた藤九郎の姿が描き出されています。
1984年に記録された映像ですが、藤九郎の狂言師としての誇りや芸にかける情熱が伝わってきます。

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講演では、一般社団法人日本庭園協会常務理事も務める公園の専門家、高橋先生からお話を伺いました。
日本に初めて公園ができたのは明治6年(1873)のことで、
東京には上野公園、浅草公園、飛鳥山公園、芝公園、深川公園が開設されたそうです。
高橋先生からは、明治初期の東京が今日の「公園」を創り出すに至る歴史や、
日本初の「洋風近代式公園」である日比谷公園誕生秘話など、大変興味深いお話を教えていただきました。

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次回の開催は7月9日(土)14時から、会場は國學院大學渋谷キャンパスを予定しています。
講演題目は未定ですが、上映する記録映画は、和歌山県熊野那智大社の勇壮な祭りを描く
「炎が舞う-那智の火祭り」に決まりました。
今回ご参加できなかった方も新たにご関心をお持ちくださった方も、
申し込み不要で参加無料の公開講座ですので、ぜひぜひ足をお運び下さい。
また、上映の記録映画をご覧になりたい方がおられましたら、
当財団では個人・団体を問わず全ての方に、映画(DVD, VHS, 16mm)の無料貸出を行っていますので、
こちらもぜひご利用ください。

◆記録映画無料貸出のご案内はこちら→ http://www.polaculture.or.jp/movie/rental.html
◆記録映画「狂言師・三宅藤九郎」のご紹介はこちら→ http://www.polaculture.or.jp/movie/thickbox/tab02_001.html?sc=_map
◆本講演会のご案内ブログはこちら→ http://polaculture.weblogs.jp/blog/2016/04/kokugakuin-1.html

2016年01月29日

 

【和をつなぐメッセージ】第16回 鶴澤友勇さん(義太夫節三味線)

いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、

そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、

共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。

和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

第16回は、義太夫節三味線 鶴澤友勇さんからの和をつなぐメッセージです。

 

<鶴澤友勇 Turuzawa Tomoyu プロフィール>

鶴澤友勇_img

1978年  鶴澤友路に入門

1985年  淡路人形座に入座

1986年  鶴澤友勇を拝命

1998年  財団法人人形浄るり因協会奨励賞受賞

2013年  第33回伝統文化ポーラ賞地域賞受賞

2015年  重要無形文化財「義太夫三味線」(総合指定)保持者に認定

 

①最近のお仕事で印象に残っていること。

「淡路座」に残っていた床本を基に淡路独特の演目「日高川嫉妬鱗」を復活上演したことです。今までも上演されなくなってしまった演目を復活上演しておりましたが、すべて映像や音源があるものでした。今回はそれらがなく、床本を参考に作曲させていただきました。昔の上演風景や「ここはこのような三味線の手がついていただろうな」とか想像しながら、取り組むのがとても楽しかったです。

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②この道を歩もうと決心したのは、何歳のとき、どのようなきっかけでしたか?

小学生から高校生まで友路師匠に三味線を弾いていただいてよく語っておりましたが、こういう職業があるのは知りませんでした。17歳の時、淡路人形座や文楽のことを知り、また、友路師匠の三味線のやさしさや力強さ、情の深さに魅了されていたので、「これしかない」と思いました。

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③座右の銘は。

「志を高く」
もう、これでいい…と思わず、少しずつ、少しずつ上を目指していきたいと思っています。

 

④伝統文化を未来につなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか?

淡路人形座での毎日の公演のほか、全国の学校やホールに出向き、公演や親しみやすくするために、レクチャー、ワークショップなどを行っています。また、地元の若者にも興味をもってもらうため、小・中学校の郷土芸能部(人形浄るりのクラブ)に指導に行かせていただいております。

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⑤和をつなぐメッセージリレー

伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。

 

☆ 第16回は、小波則夫さんから鶴澤友勇さんへのご質問

幼少の頃から厳格な伝統芸能の世界で、人間国宝鶴沢友路師の薫陶をお受けになり多くを学ばれたことと思います。
語り継いでいきたい師匠の言葉とは何ですか。

 

☆ 鶴澤友勇さんからのご回答

友路師匠が常々おっしゃられていたのが、「芸にはそのままの人間性がでる」ということです。人間性が音に表れるので、常に自分の人間性を磨きなさいと、教えられてまいりました。この言葉を胸に一生精進していきたいと思っています。また、次の世代の人へ伝えていきたいと思います。

 

2015年11月30日

【和をつなぐメッセージ】第15回 小波則夫さん(小波流 琉球きからじ結家元)

いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、

そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、

共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。

和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

第15回は、小波流 琉球きからじ結家元 小波則夫さんからの和をつなぐメッセージです。

 

<小波則夫 Konami Norio プロフィール>

小波則夫_img

1925年  沖縄県平良市(現 宮古島市平良下里)生まれ

      本名 古波蔵 佐紀(こはぐら すけのり)

1945年  劇団 「翁長座」に入団。沖縄の初代女優陣の結髪を担当。

      身分や階級、男女、年齢に応じて微細に結髪に変化をつけ、

      また、この時期に、琉球士族男性の髪型であるカタカシラを独特の

      「中組カタカシラ」として創案し体系づける。

1959年  退団後は,琉髪の結髪師 『小波流』を名乗りその道に専念。

1992年  沖縄県立芸術大学で非常勤講師

      NHK大河ドラマ「琉球の風」床山師の結髪指導。

2006年  国立劇場おきなわ組踊伝承者養成コースの講師として結髪、扮装法を指導。

      (現在継続中)

2011年  国立劇場文化講座企画「琉球のきからじ~小波則夫の技~」結髪、着付の実演

 

<主な受賞>
1996年  沖縄タイムス芸術選賞 功労賞

1998年  第4回ニッセイバックステージ賞

2002年  第22回伝統文化ポーラ賞優秀賞

      沖縄県文化功労者表彰(県教育委員会)

2008年  第15回島袋光裕芸術文化賞

2013年  平成25年度沖縄県文化功労章(「伝統芸能・工芸部門」)

 

<認定>
平成20年(2008年)  国選定保存技術「結髪(沖縄伝統芸能)」保持者認定

 

<叙勲>
平成22年(2010年)  旭日双光章拝受

 

<主な著書>
「きからじの世界」(芸歴50周年記念誌、結髪教本)
「小波則夫の着付け」(ビデオ教本)

 

<記録資料>
国選定保存技術「沖縄伝統芸能」結髪記録製作
(平成21年より「きからじの世界」DVD,リーフレットNO.1~6まで制作中)

 

①最近のお仕事で印象に残っていること。

2011年(平成23)に、国立劇場おきなわ伝統芸能公開講座の一環として開催された「琉球のきからじ~小波則夫の技~」の依頼です。講座では、琉球大学教授大城學氏による解説のもと、組踊や琉球舞踊、沖縄芝居に不可欠な結髪や着付を実演致しました。王国時代より日常生活の中に伝わった結髪や着付法と舞台芸術に見る技法との違いを紹介する取り組みは初の試みとなり、多くの芸能実演家や一般の参観者に、伝統文化における扮装の位置付けを理解して頂く良い機会になりました。

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選定保存技術映像記録NO.6より 若衆の髪型(丸結)

 

②この道を歩もうと決心したのは、何歳のとき、どのようなきっかけでしたか?

1945年(昭和20)、戦争で親を失った私は、自活を余儀なくされました。もともと芝居が好きでしたので、終戦直後すぐに、八重山からきた劇団に入団。15歳でした。結髪人生はその時から始まりました。生来、細身で小柄な体型と手の器用さが幸いし、劇団では女形を勤める傍ら、先輩の結髪を見よう見まねで学びました。入団1週間ほどで、劇団員の鬘をすべて任されるまでになり、琉球髷だけでなく大和芝居の日本髪なども結い上げておりました。この時期、戦争による男性役者の不足から、男性に変わる女優の台頭に伴い、男役をする女優のために中組カタカシラ(男性の髪型)を考案。さらに美しさを強調するため、かつら結い技法によるイナグカラジ(女性の髪型)を考案しました。これらの結髪法は広く普及し、今日多くの舞台で活用されております。

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選定保存技術映像記録NO.6より 若衆の髪型(丸結)

 

③座右の銘は。

「従蘭二青(じゅうらんにしょう)」― 私が最も好きな言葉です。「青は藍より出でて藍より青し」と教えるこの言葉は、弟子を育成していくうえで、私が最も心掛けている指針です。多くの弟子たちが、私を凌ぐ技術者として成長することを祈り、指導しております。

 

④伝統文化を未来につなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか?

幸いなことに私は、戦前の舞踊家や芸術家の舞台を観る機会を得、また舞台経験も積んできました。戦後は芸術祭や芸能コンクールの受験者たちの扮装(結髪・化粧・着付)を一手に引き受けてきました。戦前から戦後にかけて変遷する扮装法をみてきた者の責務として、常々その記録を残したいと考えておりました。2008年(平成20)、国選定保存技術保持者「結髪(沖縄伝統芸能)」の認定を頂き、現在、保存技術記録映像として舞台扮装の変遷について、資料作成に取り組んでいるところです。また、公益財団法人国立劇場おきなわ運営財団伝統芸能伝承者養成研修(組踊)の講師として,扮装法の基本を指導しております。

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記録制作 結髪(沖縄伝統芸能)リーフレットシリーズ

 

⑤和をつなぐメッセージリレー

伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。

 

☆ 第15回は、石田知史さんから小波則夫さんへのご質問

沖縄は一度米軍に占領され、また、ご自身にも戦争により様々なご苦労があった事と拝察されます。沖縄が、そのような状態でしたのに、消滅を免れ、文化の継承とはなぜ可能だったのでしょうか。

 

☆ 小波則夫さんからのご回答

石田様、ご質問有難うございます。 おっしゃる通り、京都では土地柄もあって髪結いを生業とされる方々がいらっしゃいますね。沖縄で戦後、髪結いを生業にしたのは、私1人だけでした。今では多くの方がおられます。嬉しいことです。 沖縄(琉球)を形容する言葉に"歌と踊りの島"という表現が使われて久しくなります。元来、沖縄(琉球)の芸能は祭祀から発達し、生活のあらゆる場面で芸能が営まれ、育まれてきました。歴史的にも見ても琉球王国では明・清国の使者を歓待するため躍奉行職が存在したほどです。 70年前、人も物もすべてが灰燼と化した地獄の沖縄戦の時でさえ、苦しい収容所生活の中で沖縄人(うちなーんちゅ)は芸能を求めました。誰からともなく空き缶(沖縄方言:カンカラ)を胴に見立てた「カンカラ三線」が鳴り響き、戦争の嘆きも悲しみさえも唄や音楽に乗せる沖縄人(うちなーんちゅ)の心には、慣れ親しんだ芸能に唯一の光明を見出し、安寧を託す思いがあったのです。沖縄人(うちなーんちゅ)には、歌や踊りが心の底辺にあり、共に生きている島なのだと思っています。   アメリカ施政県下、地元新聞社である沖縄タイムス社主催の芸術祭(1954年第1回開催、現在まで継続中)や琉球新報社主催の琉球古典芸能コンクール(1966年第1回開催、現在まで継続中)も開催され、芸能復興の大きなきっかけになりました。今日の伝統文化の発展、継承はこのような取り組みも要因となり、沖縄人(うちなーんちゅ)の芸能熱に拍車がかかったことも事実です。

 

2015年08月27日

【和をつなぐメッセージ】第14回 石田知史さん(鋳込みガラス作家)

いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、

そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、

共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。

和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

第14回は、ガラス作家(鋳込みガラス:別名パート・ド・ヴェール) 石田知史さんからの和をつなぐメッセージです。

 

<石田知史 Ishida Satoshi プロフィール>

1972年  石田亘・征希の長男として京都に生まれる   Img_0514

1992年  東京ガラス工芸研究所パート・ド・ヴェール専科卒業

1995年  アジア・中近東・中南米諸国を美術研究のため旅する

2003年  日本伝統工芸展 朝日新聞社賞受賞

2006年  日本伝統工芸展 日本工芸会総裁賞受賞

      第24回京都府文化賞奨励賞受賞

2013年  第33回伝統文化ポーラ賞奨励賞受賞

      日本伝統工芸展60回記念「工芸からKOGEIへ」選定出品
      (東京国立近代美術館工芸館)

2015年  「菊池寛実賞 工芸の現在」選定作家として出品
      (菊池寛実記念智美術館)

現在    日本工芸会正会員

 

①最近のお仕事で印象に残っていること。

ポーラファルマ様のRISING STAR AWARD賞の副賞用の作品を制作させて頂いた事です。
受賞された先生の研究室に長く飾って頂く事を考え、ステンレス製の額装を発注し、
和の雰囲気を持ちつつも、現代的でインパクトのある額装を制作しました。

普段の自己完結する仕事とは違い、他分野の方との共同作業の難しさと面白さを感じました。
新たに創設された顕彰の意図を大切に、ますます世界に活躍する受賞者の輝かしい未来の象徴を
イメージした事がご理解いただけたことが、とても嬉しかったです。

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POLA PHARMA RISING STAR AWARD 副賞

 

②この道を歩もうと決心したのは、何歳のとき、どのようなきっかけでしたか?

26歳のときに二年間の海外の一人旅(美術・文化研修をかねて)から帰って来たときです。
外の世界から、日本の工芸の文化の重要性とオリジナリティを再認識することが出来た事と、
自分の中で日本という国の相対化が出来、自分の国を第三者的に見る事が出来るようになった事が
きっかけでした。

 

③座右の銘は。

「ライバルは過去の自分である」

常に過去の自分を乗り越える努力をしないといけない。
と考えています。

 

④伝統文化を未来につなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか?

主に個展、及び日本伝統工芸展への出品、美術館の企画展に出品などをしています。
工芸の魅力(可能性)をみなさまに伝える機会が持てると嬉しいなと思っています。

可能な範囲でですが、ギャラリートークやレクチャーなども行っています。

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工芸からKOGEIへ(東京国立近代美術館工芸館)ギャラリートーク

 

⑤和をつなぐメッセージリレー

伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。

 

☆ 第14回は、名倉鳳山さんから石田知史さんへのご質問

石田さんは、ご両親がガラス工芸作家で、最近では奥様も工芸展に出品されるようになり、
一家4人でパート・ド・ヴェールの技法を進化させておられます。
そこでお伺いしたいのは、古より伝わるこの技法を、一人の作家として、また石田家として
どのような方向に向けていかれるのでしょうか?
新作を楽しみにしています。

 

☆ 石田知史さんからのご回答

ありがとうございます。
パート・ド・ヴェール(鋳込み硝子)は随分昔に日本では勾玉などに見られる古代ガラス技法ですが
その後継承される事無く、現在ではアート作品に使われることの多い、手間のかかる稀少な技法です。
西陣の帯や着物の図案家をしていました両親は、日本の工芸の美意識をこの技法を使って
表現できないかと苦心して参りました。

最近になってやっと新たな日本の工芸として認められてきました。
両親の苦労と私たちが蓄積して参りました経験を生かして、今後も工芸の美を追求し続け、
現代に生きる作品を制作していきたいと考えております。

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鉢「交錯する青」(径59×高12.5cm)

 

【企画展のご案内】 

・石田知史・亘・征希パート・ド・ヴェール作品展

 —手のひらの煌めき―

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 会期:2015年9月18日(金)~27日(日)

 時間:10:30~19:00 最終日は17:00まで

 会場:和光ホール
          東京都中央区銀座4丁目5−11和光本館6階

 

 

2015年03月30日

【和をつなぐメッセージ】第13回 名倉鳳山さん(硯工芸作家)

いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、

そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、

共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。

和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

第13回は、名倉鳳山さんからの和をつなぐメッセージです。

 

名倉鳳山さん<名倉鳳山 プロフィール>

1972年  愛知県立旭丘高校美術科卒業  

1977年 東京藝術大学彫刻科卒業

1990年  第21回 東海伝統工芸展 愛知県知事賞受賞

1991年  第7回 伝統工芸第七部会展 日本工芸会賞受賞

1997年  第44回 日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞受賞

      (文化庁買上となる)

1999年  第21回 都市文化奨励賞受賞  

2003年  愛知県芸術文化選奨文化賞受賞 五代鳳山襲名

2010年  新城市無形文化財に指定される

2013年   第33回伝統文化ポーラ賞地域賞受賞

2013年  第60回日本伝統工芸展奨励賞受賞

2014年  第61回日本伝統工芸展より特待作家(招待)となる

 

①最近のお仕事で印象に残っていること。

2013年(平成25年)の秋、東京藝大で助手を勤めていた息子が初めて硯を作りました。

それは東日本大震災で壊滅した宮城県雄勝硯の復興事業として、若手作家に新作硯の制作依頼があってのことでした。私も原石の準備や硯刻の技術的な面で指導や手伝いをしました。

そのことは、私自身にとって思わぬ心境を残しました。初心を思い出すと共に改めて原石の美しさと存在感を見つめ直すことが出来たのです。現在、今春の展覧会に向けて制作中ですが、シンプルな硯の原点を見極めるような新作を作りたいと思うのは、今でもあの時の印象が継続しているからかも知れません。

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左) 五代名倉鳳山作:玖陵硯 KURYO-KEN / 2009年 24.3 × 16.5 × 5.8cm 鳳鳴石
右) 名倉達了作:円桃硯 ENTO-KEN / 2015年 12.0×12.0×2.5cm 鳳鳴石

 

②この道を歩もうと決心したのは、何歳のとき、どのようなきっかけでしたか?

1968年(昭和43年)中学3年生の秋、四代目の父から美術高校・美術大学への進学を薦められました。その時父は一言も「跡を継げ」とは言いませんでした。15歳の私は世間知らずだったことは言うまでもなく、不器用で絵や工作が苦手な我が身にとって受験がいかに厳しいものか、まして伝統継承という事の重大さなど考えることもなく、少しばかりの都会への憧れが背中を押しました。本気で家業を継ぐことを考えていたとは思えませんが、『一人息子としていつか田舎に帰って跡を継ぐのだろう』と意識し、進学を決めた自分がいたように思います。

そして、本気でこの道を歩もうと決心したのは、公募展出品等ある程度経験を重ねた30歳の頃だったと思います。

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③座右の銘は。

「継続は力なり」

大学卒業と同時に家業の道に入り38年経ちました。ただ漠然として長く仕事を続けてきた様にも思えますが、振り向けば足跡は確実に残っています。この頃では、続ける苦しさより作る喜びを感じる方が多くなってきました。

 

④伝統文化を未来につなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか?

日本伝統工芸展への出品のほか、子供鑑賞事業等で小中高生に硯の文化・制作工程などを伝えています。また書道団体の研修会などに出向いての講演の他、自宅の工房兼アトリエで実演を交えた講演活動。大学で日本画の学生に硯の文化と正しい手入れ方法などを講義しています。

後継者への技術伝承については、少しずつ息子へ伝え始めたところです。

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⑤和をつなぐメッセージリレー

伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。

 

☆ 第13回は、林美音子さんから名倉鳳山さんへのご質問。

私の演奏している「柳川三味線」は、日本で三味線が誕生した当初の姿を残した、三味線の「祖型」と言われていますが、現代での認知度は極めて低く、若い演奏家も非常に少ないのが現状です。鳳来寺硯も、いくたびかの衰亡の危機に見舞われたとのことですが、先生は後継者の育成についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。ご指導について重きを置かれている点、などお聞かせ頂けましたら嬉しく思います。

 

☆ 名倉鳳山さんからのご回答

パソコンが普段の生活に普及している現代。それでも筆を持って書をたしなむ多くの人がいます。また、筆で自分だけの文字を書くことに憧れる人はもっと多いと思います。

しかし、硯と墨を使わない墨汁での書道が主流となり、硯の認知度は一段と下がってきました。そんな中で家業として伝承してゆく事は非常に厳しくなって来ました。

30歳の息子は私と同じように大学で彫刻を学びました。しかし私が直に作硯の道に入ったのと異なり、現代アートの作家として、また大学で彫刻の研究者として歩み始めています。  

そして、前述の体験(宮城県雄勝硯の復興事業に関わらせて頂いた)をきっかけに家業を見直し、硯を作り始めました。現代彫刻の研究と平行して少しずつ硯作りを継続して行く。その道が見えてきた所です。大量に制作する技術ではなく素材やデザインを再考し、日本文化における現代の硯を研究し、発信してほしいと願っています。

 

【企画展のご案内】 

・名古屋 古川美術館特別展

 『メイド・イン・愛知 工芸の架け橋』

 開催中~5月10日(日)

 

・第46回東海伝統工芸展

 名古屋丸栄 5月  7日(木)~ 12日(火)

 岐阜髙島屋 5月14日(木)~ 19日(火)

 

・第25回伝統工芸諸工芸部会展

 日本橋三越 6月 3日(水)~ 9日(火)

 

※名倉鳳山さんは、平成24年度 第33回伝統文化ポーラ賞地域賞受賞者です。

 

2015年02月23日

磨きぬかれた「伝統芸能」技術はプロ野球選手の育成にも通じる・・?

 

ニュースでも報道されているとおり、プロ野球の各チームが開幕に向けて続々とキャンプインした。今年度の優勝を目標に、各チームが選手個々の攻守走の技術向上とチームとしてのレベルアップに取り組み、ハードなトレーニングをこなしている。

選手にとっては試合に出て活躍することが第一で、一軍選手はレギュラー確保、二軍選手は一軍昇格を目指して激しい競争の真っ最中だ。

今年は大リーグから松坂、黒田など大物選手が帰国する中、新人の大型選手も多く、見どころ満載だ。そんな中、開幕を心待ちにしている野球通たちに驚愕の記事が飛び込んできた。

なんと平成21年度伝統文化ポーラ賞優秀賞の受賞者で筝曲家の萩岡松韻さんが、西武ライオンズの2軍キャンプ(高知・春野)に特別講師として招かれたのだ。萩岡先生は山田流筝曲萩岡派4代目家元で東京芸大の教授でもある。しかし、この時期は教養や趣味特技として筝曲の講義を受けている時間や余裕は選手にもチームにもない。2軍の選手とは云え、日本野球界最高峰のプロ野球選手を相手に何を講義するのか・・・・?

答えは「間」。野球では、投手ならリリースまでの「間」、打者であればバットを始動するまでの「間」の大切さがよく説かれ、一流選手になればなるほど自分の独特の間を大事にしているといわれている。

今回は筝曲の演奏での「間」の重要性を講義し、選手にも意識してもらうというものらしい。若手の育成計画の一つとして取り入れられたこの講義。お箏と野球の融合でさらなるレベルアップが図られ、第2、第3のイチローが出てくるか・・・楽しみです。

2015年01月29日

【和をつなぐメッセージ】第12回 林美音子さん(柳川三味線)

いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、

そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、

共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。

和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

第12回は、柳川三味線 林美音子さんからの和をつなぐメッセージです。

 

林美音子さん

<プロフィール>

林美音子 Hayashi Mineko

柳川三味線・生田流筝曲演奏家。古典を母・林美恵子に、柳川三味線を津田道子師に、現代邦楽を沢井忠夫師に師事。国内のみならずポーランド文化芸術省・日本大使館後援公演、中国蘇州市外事弁公室国際交流センター招聘公演、ハワイ大学音楽学部後援公演など、グローバルな演奏活動を行う。2011年、くまもと全国邦楽コンクールにて優秀賞を受賞。続いて(公財)日本伝統文化振興財団「邦楽技能者オーディション」にて合格記念CD『柳川三味線 林美音子』をリリース(販売元:ビクター)。同年11月、文化庁芸術祭参加公演による初のリサイタル開催。2012年、「第32回伝統文化ポーラ賞奨励賞」を受賞。同年11月、京舞井上流五世家元、井上八千代師を客演に迎え、2度目のリサイタルを開催。2014年、第3回「柳川三味線リサイタル」では、古典曲目に加え、本條秀太郎師による委嘱作品や、現代舞踊との共演演目を披露するなど、柳川三味線の継承を中心に、現代における邦楽の在り方を模索し、新たな境地へと挑戦を重ねている。また教育現場における指導にも力を注いでおり、京都教育大学附属桃山小学校の和楽器講師、奈良教育大学非常勤講師などを務め、邦楽を未来に繋ぐ架け橋としての役割も担う。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等のメディアにも多数出演。

 

①最近のお仕事で印象に残っていること。

先日、奈良教育大学附属小学校にて、小学四年生全クラス(各クラス40分)を対象に、箏の授業を致しました。

生徒の人数に合わせた楽器や備品の準備や、楽器の運搬など、経緯においては大変な思いをしながらも、授業を終えた時の、子供たちの次のような一言がとても印象的でした。

(小学校の先生に)「先生!もっとお箏したい!」

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②この道を歩もうと決心したのは、何歳のとき、どのようなきっかけでしたか。

母が師匠ということもあり、3歳の時から和楽器を習い、それは当然の事のように育ちました。しかし、そのような状況が窮屈に感じ、一時期全く別世界へ身を投じた時期がありました。それから数年経ち、充実した社会経験をした上で、ある日、母が突如体調を崩し出演ができない、という事態となり、未熟ながらも代役を努めさせて頂きました。そのとき、母の音楽や意志を継ぐ、という事を実感し、地歌の伝承という大きな木の、一本の幹になれればと思いました。

 

③座右の銘は。

「四十、五十はまだまだヒヨコ」

母の師匠、地歌演奏家・三好敦子師の言葉です。座右の銘という言葉は正しく当てはまるかはわかりませんが、母もこの言葉をよく申しており、とても強く心に留まる言葉です。私はこの言葉を思うときはいつも、先人の方々から、次の様に言われているのだ、と感じます。

三十の若手など、タマゴで当然。タマゴのうちに沢山学び、躓き、恥をかき、常に自分に満足などできないとしても、邁進すればよい。そうすればきっと、四十・五十の時には、ヒヨコになれるのだ、と。

 

④伝統文化を未来へつなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか。

奈良教育大学や、京都女子大学の教員養成学科での講義を通し、未来の音楽の教職員となられる学生達に、箏・三味線の奏法や子供への教え方、そしてなにより目の前でその音色の美しさや多様性を伝える、ということに努めています。また、京都教育大学附属桃山小学校や奈良教育大学附属小学校にて、子供たちの感動や意欲を引き出せる和楽器授業を心がけて実施しています。

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自身の演奏活動においては、古典演目を修めることは当然ながら、委嘱作品の演奏や現代舞踊との共演演目など、新たな世界へ積極的に挑戦し、発信するということに努めています。

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⑤和をつなぐメッセージリレー

伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。


☆ 第12回は、九代玉屋庄兵衛さんから林美音子さんへのご質問。

からくり人形は“形”があり、二代目が作った山車からくり人形が現在でも現役で動いています。音楽の場合は、その都度消えてしまう訳ですが、伝統的な音色、調べをどのような点に留意して伝承されていますか。

 

☆ 林美音子さんからのご回答

二代目の方がお作りになられたものが現役とのこと、まさに名匠の洗練された技の証だと、驚いております。
ご質問頂きました件につきましてお答えさせて頂きます。
私は、あまり理論的に考えることはせず、師匠の演奏そのままを体に吸収することを心がけています。特に留意しているのは、息遣いや空気、「間」かもしれません。仰せのように音楽はその都度消える瞬間の芸ですが、その瞬間をより完成度の高いものにすべく、長い時間をかけて何度も繰り返し稽古します。そうすることで、絶対の奏法・音色を、頑なまでに守っています。昔の音源等も譲り受け、独特な間の取り方や細かな感覚も可能な限り聴き取り、より精密な伝承を心がけ、努めています。

【公演のご案内】

・第15回『おち椿の会』

日時:2015年3月29日 午後4時30分開演

会場:京都 法然院

チケット:前売2500円、当日3000円、学生2000円 ※小中高生無料・未就学児は不可

主催:法然院(075―771―2420)/えん(072-683-6733)

後援:京都市・京都市教育委員会

 

・『紀尾井 午後の邦楽~四季の彩り 春~』

日時:2015年4月8日 午後1時30分開演

会場:東京 紀尾井小ホール

チケット:2000円(全席指定)/03-3237-0061(紀尾井ホールチケットセンター)

主催:公益財団法人 新日鉄住金文化財団

 

※林美音子さんは、平成24年度 第32回伝統文化ポーラ賞奨励賞受賞者です。

 

 

 

 

2014年11月27日

【和をつなぐメッセージ】第11回 九代玉屋庄兵衛さん(尾陽木偶師)

いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、

そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、

共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。

和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

第11回は、九代玉屋庄兵衛さん(尾陽木偶師)からの和をつなぐメッセージです。

 

二文字書き人形制作風景
二文字書き人形制作風景

<プロフィール>
昭和29年 名古屋市生まれ
昭和54年 父である七代目玉屋庄兵衛に入門
平成7年  兄である八代目より九代玉屋庄兵衛を継承
平成15年 国立博物館の依頼で「茶運び人形」制作・寄贈
平成17年 愛知万博愛知県館モニュメント「唐子指南車」制作、同年大英博物館からの依頼で「茶運び人形」制作・寄贈

<受賞歴等>
平成12年 都市文化会議「都市文化奨励賞」
平成13年 犬山市「犬山市文化功労表彰」
平成14年 名古屋市「名古屋市芸術奨励賞」

①最近のお仕事で印象に残っていること。

2009年に安城市の旧家から発見された文字書き人形は、右手と口で筆をくわえ一度に二文字を書く人形であった。一文字書き人形はアメリカから里帰りしたものを見たことがあるが、一度に二文字を書く人形は初めてで驚いた。発見された人形の修理と新しくその復元を依頼されたが、発見時には傷みがひどく、さらに文化財指定がなされたこともあり修理、復元には苦労をした。特に、重要な部品であるカムの破損が激しくさらに、文化財ということで分解もできなかった。しかし、難しいカムを復元し文字が書けた時の感動と喜びは今でも忘れられない。

二文字書き人形復元


二文字書き人形復元


②この道を歩もうと決心したのは、何歳のとき、どのようなきっかけでしたか。

24歳の時に七代目である父から言われ手伝い始める。その父も7年後に亡くなり、八代目を継いだ兄もその7年後に亡くなる。その時にこの道を進むという決心をした。

七代と九代




七代と九代

七代と九代


③座右の銘は。

父から言われた「修理をしたら50年、100年戻ってこない仕事をしろ。」という言葉を常に心に秘めている。



④伝統文化を未来へつなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか。

犬山市からくり制作実演専門委員、愛知県立芸術大学非常勤講師、愛知工業大学客員教授などでからくり人形に関する講習製作指導、デモンストレーションを行っている。また、名古屋市、犬山市の小中学校で定期的にからくりの授業をし、地域の行催事などには出来る限り多くの人に知っていただけるよう講演・実演を行っている。

愛知工業大学での市民講座講演風景

愛知工業大学での市民講座講演風景

海外交流基金(日本文化紹介派遣事業)アルジェリア(アルジェ工科大学)での講演風景


海外交流基金(日本文化紹介派遣事業)アルジェリア(アルジェ工科大学)での講演風景


⑤和をつなぐメッセージリレー

伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。


☆ 第11回は、新里玲子さんから九代玉屋庄兵衛さんへのご質問。
業種によってかなり違いがあると思いますが、伝統文化業界の後継者問題は永遠の課題かと思いますが、いかがでしょうか。制作者に女性もおられるのでしょうか。

☆ 九代玉屋庄兵衛さんからのご回答
現在、二人の弟子をとって伝統の技を教えている。また、息子も稼業を継ぐといっているので、高校卒業後には教えていくこととなる。
創作人形作家には女性はいるが、伝統的な修理・復元を手掛ける女性は、現在はいない。


【作品展のご案内】

「交わる縁 小山硬と玉屋庄兵衛 ~その作品と交流~」

日時:2014年10月18日(土)~2014年12月14日(日)

場所:古川美術館(名古屋市)



※九代玉屋庄兵衛さんは、平成15年度 第23回伝統文化ポーラ賞地域賞受賞者です。

 

2014年07月30日


【和をつなぐメッセージ】第10回 新里玲子さん(宮古上布染織作家)

いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、

そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、

共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。

和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

第10回は、新里玲子さん(宮古上布染織作家) さんからの和をつなぐメッセージです。


新里玲子先生<プロフィール>
昭和23年 宮古島生まれ
昭和47年 下地恵康宮古上布工場入門
昭和50年 琉球王府時代の色彩豊かな宮古上布を求めて独立。宮古島苧工房主
現在  国指定重要無形文化財「宮古上布保持団体」代表、日本工芸会正会員

<受賞歴等>
平成7年4月 日本伝統工芸染織展「日本経済新聞社」賞
平成12年2月 沖縄タイムス(県内)芸術選「奨励賞」
平成23年9月 日本伝統工芸展「奨励賞」


①最近のお仕事で印象に残っていること。

最近県外でギャラリートークの機会に恵まれて、工房で制作した宮古上布の着物をまとう方々にお会いできる事はうれしいものです。

宮古上布着物 

宮古上布着物

②この道を歩もうと決心したのは、何歳のとき、どのようなきっかけでしたか。

23歳。
他の仕事をしていたのですが、天職と思える何かをやりたいなぁと熱い想いを抱いておりました。宮古上布の存在を知って、たまたま帰省した時に下地恵康宮古上布工場を訪ねたのがご縁で織りをスタートしました。
機織りの日々の中で小学5年生の授業で「つるの恩返し」の物語に魅かれ織りへの夢を膨らませていたのだと自分の胸の内を知りました。


③座右の銘は。

「夢は描けば叶う!」。


④伝統文化を未来へつなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか。
・個(工房)でできる事
 子供を含め数名の方々が日々研鑽中
 宮古上布の材料苧麻糸づくり教室を週1回工房で開く(糸績みサロン)

後進の指導の様子 糸績み

(左)糸績み / (右)後進の指導の様子

 

・組織でできる事
 国指定重要無形文化財「宮古上布保持団体」として部門ごとに伝承者養成実施
 ①図案考案・絣手括り ②染色 ③織り ④砧打ち
※技を体得しても継続して仕事ができないという厳しい現実があります。原材料の手績み苧麻糸確保、手間賃、流通等、解決しがたい諸般の事情があります。

苧麻の刈取り

苧麻の刈取り


⑤和をつなぐメッセージリレー
伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。

☆ 第10回は、砺波子供歌舞伎曳山振興会さんから新里玲子さんへのご質問。
宮古島へ行ったとき、上布の展示館を訪れました。地域がら「能登」や「越後」の上布 は目にする機会があるのですが、やはり琉球王国の風韻は格別に思えました。地方にい ても、求めやすくなればと思うのですが。

☆ 新里玲子さんからのご回答
苧麻の栽培、糸績み、絣括り、染織り、砧打ちと1反の宮古上布が出来るまで数か月を要し年間数十反ですので、着物ファンの手に届きにくいのが現状です。
紡績糸(宮古上布は手績み苧麻糸のみ使用)等を使ったお求めやすい価格の商品等も制作されております。


【今後の個展開催予定】
・平成26年秋の日本伝統工芸展に出品予定。
・数年後に個展開催を予定しています。

 

※新里玲子さんは、平成24年度 第32回伝統文化ポーラ賞地域賞受賞者です。

2014年03月25日

【和をつなぐメッセージ】第9回 砺波子供歌舞伎曳山振興会さん

 

いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、

そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、

共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。

和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

第9回は、砺波子供歌舞伎曳山振興会 さんからの和をつなぐメッセージです。

 

平成25年度 中町曳山
平成25年度 中町曳山

三味線教室発表
三味線教室発表

<プロフィール>

「出町子供歌舞伎曳山」の保存継承を目的に、曳山車を持つ三町によって 組織されています。
曳山車の保存修理や浄瑠璃太夫・三味線奏者の育成と、春祭りでの子供歌舞伎演舞を財政面で支援しています。

【主な指定と受賞歴】

昭和42年 砺波市無形民俗文化財

平成 6年 富山県無形民俗文化財

平成18年 富山県功労賞

平成21年 文化功労表彰・文部科学大臣表彰

平成23年 伝統文化ポーラ賞地域賞

 

①最近の公演で印象に残っていること。

次のような全国規模の催しに招かれ「子供歌舞伎」を披露できたことを誇りに思っています。

昭和60年 全国子供民俗芸能フェスティバル (奈良市)

平成4年 ジャパンエキスポ (小杉町)

平成8年 国民文化祭 (砺波市)

平成12年 全国子供歌舞伎フェスティバル (小松市)

平成14年 グリーンコミュニティ全国大会 (砺波市)

平成17年 近畿北陸東海ブロック民俗芸能大会 (大阪市)

 

三町揃い曳き
三町揃い曳き

 

②振興会を設立しようと決心したのは、いつ、どのようなきっかけでしたか。

以前から「浄瑠璃大会」を開いたり、文楽同好会のような組織はありました。しかし、子供歌舞伎曳山祭りに衰退の兆しが見えてきましたので、昭和40年に各曳山団体が連合して保存継承と振興策を図ることになりました。

 

③座右の銘は。

「一口浄瑠璃知らぬは男の恥」。浄瑠璃が盛んだった明治のころに言われた言葉で、地元では大人なら誰でもたしなんでいたのでしょう。今は?

 

④伝統文化を未来へつなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか。

天明9年(1789年・現存する最古の資料年)に曳山車が築造され、今日まで子供歌舞伎が継続されている要因に、出町浄瑠璃の伝統があります。
その伝統の継承のため、毎年プロを招き浄瑠璃太夫・三味線奏者の養成を行っています。

浄瑠璃大会
浄瑠璃大会

三味線教室
三味線教室

 

⑤和をつなぐメッセージリレー

伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。

 

☆ 第9回は、鈴木徹さんから砺波子供歌舞伎曳山振興会さんへのご質問。

少子化が問題とされるなか、歌舞伎を演じる子供たちはもちろん、指導にあたる後継者の方を育てることはたいへんかと思いますが、どのようになされているのでしょうか。

 

☆ 砺波子供歌舞伎曳山振興会さんからのご回答

振り付けと化粧・着付け(衣裳は自前)は外部の指導者や役者の方にお願いしています。太夫・三味線は、今は何とか町内で賄える人数ですが、高齢化が進んでいます。また後見役については、町のドーナツ化現象で中心市街地に若者が少なくなり不足気味です。
歌舞伎を演じる小学生も、曳山三町では役者数の確保に限界が来ています。
いずれ地域の小学校校下の子供に枠を広げる時期が来ると考え、小学校に「子供歌舞伎クラブ」を作ってもらい「学習発表会」で発表するなど歌舞伎に親しんでもらっています。

 

【公演のご案内】

・春季祭礼 

 4月29日・30日 11回上演 (砺波市市街地)

・チューリップフェア公演 

 5月3日 11:30 , 14:00 フェア会場(砺波市文化会館) / 17:00 子供歌舞伎曳山会館

外題 「一の谷嫩軍記須磨浦の段組討の場」

 

※砺波子供歌舞伎曳山振興会さんは、平成23年度 第31回伝統文化ポーラ賞地域賞受賞者です。

 

2014年01月24日

【和をつなぐメッセージ】第8回 鈴木徹さん(陶芸家)

 

いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、

そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、

共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。

和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

 

第8回は、陶芸家の鈴木徹さんからの和をつなぐメッセージです。

 

鈴木徹さん<プロフィール>

鈴木徹 Suzuki Tetsu

1964年 岐阜県多治見市に生まれる
1987年 龍谷大学文学部史学科卒業
1988年 京都府陶工高等技術専門校卒業
1991年 第38回日本伝統工芸展入選 以降20回入選
2003年 第50回日本伝統工芸展 新人賞受賞
2005年 第1回菊池ビエンナーレ 大賞受賞
2008年 第36回新作陶芸展 日本工芸会賞受賞
2009年 第3回菊池ビエンナーレ 奨励賞受賞
2012年  平成23年度岐阜県伝統文化継承功績者顕彰
2012年 伝統文化ポーラ賞奨励賞受賞
2013年 母校龍谷大学より龍谷奨励賞受賞

 

<パブリックコレクション>

菊地寛実記念智美術館、兵庫県陶芸美術館、岐阜県現代陶芸美術館

 

 ①最近のお仕事で印象に残っていること。

大きな大きな壺が作りたくて、手捻りで積み上げて作りました。いくら大きなものを作っても、窯に入らなかったらどうしようもないですから、窯の入り口のサイズを測って、これに合わせて作っていきました。残念ながら、二つ作ったうちの一つは大きすぎて窯に入りませんでした。大きいだけに焼成にも神経を使いましたが、無事に焼き上がり個展の会場に並べることができました。これを見た皆さんが、驚いて下さった瞬間はやってよかったと思いました。

Img02

 

②この道を歩もうと決心したのは、何歳のとき、どのようなきっかけでしたか。

男ばかり3人兄弟の長男であった私は、弟たちへの見せしめか小さいころから親父に怒られてばかりいました。あまりに厳しくやられたものですから、大学に進学する際にはとにかく家から出たくて、京都の大学に進みました。歴史が好きでしたので史学科に進みました。その当時は、厳しい親父の下で陶芸をやろうという気持ちは全くなく、博物館か美術館の学芸員になりたいとの思いを抱いておりました。

ある日、大学のゼミの先生から卒業後のことを聞かれ、学芸員になりたい旨を伝えると、陶芸ファンであり、親父のことをよく知っておられた先生は、陶工専門校に行くことを薦められました。さすがに学芸員の募集なんてほとんど無かったので、先生の仰せに従ってそこを見学してみたところ何やら面白そうで、1年間通ってみてそれから考えて見てもいいやと思い通うことにしました。

そこでは、陶芸の工程を初歩から教えてもらうのですが、初めて自分でロクロを挽いて作ったものに釉薬を掛けて、それが窯から出てきたときのカミナリに打たれたような衝撃を今でも忘れることができません。DNAの覚醒というのか、これはやらなければいけないのだと強く思いました。間違いなくその瞬間が、私がこの道を歩もうと決心した瞬間です。23歳の時でした。

 

③座右の銘は。

座右の銘なんて恰好のいいものはありません。敢えてあげるとすれば一所懸命といったところでしょうか。当たり前のことですが、仕事の一つ一つと必死な思いで対峙しています。

 

④伝統文化を未来へつなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか。

日本伝統工芸展への出品も27歳のときからですから、早いもので20年以上になり、支部においては、いろいろな役をさせて頂く年齢となって来ました。最近、若い人たちの出品が少なくなってきていることが気になっています。日本伝統工芸展の趣旨には「伝統工芸は、単に古いものを模倣し、技法を墨守することではありません。・・・今日の生活に即した新しいものを築き上げることが、我々に課せられた責務であると信じます」とあります。やはり若い人たちの息吹に触れ、新しい感覚を取り入れて会を活性化していくことが、この展覧会を盛り上げていく上において大事なことだと思います。老若交わり切磋琢磨していくことが、伝統文化を未来につないでいくことになると思っています。

Img03 

 

⑤和をつなぐメッセージリレー

伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。

☆ 第8回は、太宰府木うそ保存会さんから鈴木徹さんへのご質問。

つないでいきたい、あるいは伝えていきたい緑釉陶器の魅力とは、どのようなところでしょうか。

 

☆ 鈴木徹さんからのご回答

織部釉を使用しながらも、今までに無かった緑色のやきものを作りたいとの思いから、織部と呼ばずに緑釉と名付けて発表してきました。これからも緑釉でやれる仕事はまだまだたくさんあると思います。皆さんを驚かせるような作品を発表し続けることが、緑釉の魅力を伝えることになると思っています。

 

【個展のご案内】

・2014年3月9日~16日 現代陶芸寛土里(千代田区) 

・2014年10月22日~28日 日本橋三越美術特選画廊

 

 ◆陶藝 鈴木徹ホームページ http://www.k5.dion.ne.jp/~t_suzuki/index.htm

 

※鈴木徹さんは、平成24年度 第32回伝統文化ポーラ賞奨励賞受賞者です。

 

2013年10月28日

 

【和をつなぐメッセージ】第7回 太宰府木うそ保存会 さん


いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、

そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、

共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。

和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

 

第7回は、太宰府木うそ保存会 さんからの和をつなぐメッセージです。

 

<プロフィール>

木うその森看板前で集合写真

太宰府木うそ保存会  

平成10年12月 太宰府木うそ保存会発足

平成23年 1月 太宰府市民遺産第1号に認定

平成23年10月 第31回伝統文化ポーラ賞地域賞受賞

平成24年 4月 太宰府市制施行30周年記念特別表彰受賞

 

 

①最近の仕事で印象に残ったこと。

太宰府の木うそは太宰府天満宮の鷽替神事に欠かせない祭具ですが、同時に幸運のお守りとしても親しまれてきた伝統民芸品です。平成23年に太宰府市民遺産第1号に認定され、太宰府の顔として太宰府市制施行30周年記念事業で姉妹都市扶餘郡へ木うそが贈呈されたことはとても嬉しいことでした。

 

②保存会を設立しようと決心したのは、いつ、どのようなきっかけでしたか。

太宰府天満宮の鷽替神事や参道の店に木鷽を納めていた職人たちが平成初め頃、次々と廃業していきました。廃業していった原因は、原木の入手困難、職人の高齢化と後継者不足でした。参道では木鷽が消え始め、今後の鷽替神事の催行にも影響が出るのではと危惧される状況になりました。その状況を鑑みた故・木村當馬氏(太宰府天満宮神職の木鷽制作者)は市民の有志が立ちあげていた木うそ制作者の会(青栁健夫ほか5名)に協力を依頼し、平成10年2月に木うそ後継者育成講習会を開催しました。この講習会がターニングポイントとなり、その後会員数が20名を超え、同年12月に太宰府木うそ保存会を設立することになりました。

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後継者育成講習会 木うそ絵付体験教室


 ◎写真左:後継者育成講習会 /写真右:木うそ絵付体験教室

 

③座右の銘は。

「一刀入魂」

太宰府の木うそは突鑿一本で木を削り出して形作られる一刀彫です。特に太宰府の木うその特徴は薄く巻き上げた繊細な羽です。羽は木うそ制作の最終段階に突鑿を使って巻き上げますが、ほんの少しの力加減で、作業が始めからやり直しとなってしまうほど難易度の高い部分です。羽を巻き上げる技術を習得するには、突鑿を自在に使いこなす鍛錬が必要で、2~3年はかかります。そこで、木うそ後継者育成講習会では「まずは100個作りましょう。木うその形になってくるのはそれからです。」と教えています。ベテラン会員でも「これこそが自分のベストだ!」と言える羽を巻き上げることは難しく、常に試行錯誤しながら日々研鑽を続けています。

 

④伝統文化を未来へつなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか。

 ・後継者育成講習会の開催

 ・原木「ホウノキ」の植樹や育成活動

 ・定期的な絵付体験教室や展示作業によるPR活動

 ・木工技術や広報活動などの情報交換を目的とした他産地交流会の開催

木うその森での下草刈り作業 大野原きじ車保存会との技術交流会

◎写真左:木うその森での下草刈り作業 /写真右:大分県大野原きじ車保存会との技術交流会

 

⑤和をつなぐメッセージリレー

伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。


☆第7回は、雨宮弥太郎さんから太宰府木うそ保存会さんへのご質問。

伝統をつないでいくために、時代の変化に応じて考えなければならないことは、どのようなことでしょうか。

 

☆ 太宰府木うそ保存会さんからのご回答

「温故知新」に尽きるのではないでしょうか。急な変革を求めるのではなく、伝えられてきた技術をしっかり受け継いでいくことがもっとも大事なことだと思います。今の保存会は無理に進化を求めてはいません。しかし、一方で先人たちがどういう背景で、どういうものを作ってきたか、正しく、詳しく知っておくことが肝要だと考えております。それを知る事が今の私たちの立ち位置を教えてくれているような気がします。

 

【公演・イベントのご案内】

○「木うそを作って、鷽替神事に行きましょう!」

    日時:平成26年1月7日(火) 12:00~17:30

    場所:太宰府館2階 木うそ絵付工房

        〒818-0117 福岡県太宰府市宰府3丁目2-3 / TEL 092-918-8700

    材料費:1,000円

    ※太宰府天満宮鷽替神事に手作りした木鷽で参加しましょう。

 

○「太宰府木うそ保存会設立15周年記念 つくって、つなぐ ~木うそのちから展~」(仮称)

    日時:平成26年3月18日(火)~23日(日)

    場所:九州国立博物館エントランスホール

    観覧料:無料

 

○「太宰府木うそ保存会設立15周年記念 木うそシンポジウム」(仮称)

    日時:平成26年3月22日(土)10:00~12:00

    場所:九州国立博物館ミュージアムホール

 

◆大宰府木うそ保存会さんのブログはこちら

 http://blog.goo.ne.jp/kiuso0211

 

※太宰府木うそ保存会さんは、平成23年度 第31回伝統文化ポーラ賞地域賞受賞者です。

2013年07月24日

【和をつなぐメッセージ】第6回 雨宮弥太郎さん(硯作家)

 

いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。
和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

第6回は、硯作家の雨宮弥太郎さんからの
和をつなぐメッセージです。

 

Img1<プロフィール>   

雨宮弥太郎 Amemiya Yatarou

1961年 山梨県生まれ

1989年 東京藝術大学大学院修了(彫刻、美術教育)

1994年 日本工芸会正会員認定

1996年 日本伝統工芸七部会展 朝日新聞社賞

1997年 日本伝統工芸七部会展 東京都教育委員会賞

2006年 日本伝統工芸新作展 新人賞

2007年 伝統文化ポーラ賞 奨励賞

その他受賞多数

 

①最近のお仕事で印象に残っていること。

元禄3年以来、323年の硯の伝統をつないでいる。特に祖父11代静軒が犬養木堂翁の教示のもと硯を工芸作品として確立して以来、「和」の感性を大切に、代々時代を硯に表現してきた。私自身はここ何年か硯に現代的な形を与えるために粘りのある石質を生かした薄手のシャープな形に取り組んでいる。

昨年、工芸会の支部展で賞もいただき、自分の中でも転機となるフォルムだと感じている。当初、新しいイメージだと思って取り組んでいたが、ある時ふと、平成元年に初めて硯石を用いた個展をした折に同様の薄手の造形を意識した作品が何点かあったのを思い出した。当時はまだ頭の中で様々な形のイメージをうまく硯にすることができずに、硯展ではなく「硯石のオブジェ展」とせざるをえなかった。当時のイメージに、私なりに納得のできる硯の形を与えることができるまで、約20年の月日が必要だったということだ。私はやっと作家として、一歩を踏み出せたのかもしれない。そして今、あのころの向こう見ずなエネルギーをまた、作品の中に取り込んでいけたらと思っている。

Image01

◎写真左:硯制作の工房にて / 写真右:硯作品 古陽硯(奥)、悠想硯(手前)

 

②この道を歩もうと決心したのは、何歳のとき、どのようなきっかけでしたか。

子供のころから、手で物をつくる事が大好きで、自然に父と同じ藝術大学を志し、当たり前のように硯づくりに関わってきたので、いつ決心したのか、というような明確なポイントは考えつかない。

 

③One’s motto.(座右の銘)

Think globally Act locally

どんなに狭くとも、硯という世界にしっかり足場を固めて集中すること、そしてその充実のためにも宇宙全体、幅広い視野と好奇心を持ち、知的で柔軟な姿勢を失わないこと。

 

④伝統文化を未来へつなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか。

硯は現在、必ずしも必要不可欠なものではなくなっています。そのため硯が現代社会の中でどんな意義をもつべきものなのか、そのイメージを再構築していく必要があります。今までのイメージにとらわれない新しい生活の中でのあり方を提案するよう、努めています。特に、硯はただ墨を磨るための道具ではなく、墨を磨る時間は心を鎮め、自分の内面と向き合う時間であること。そんな心の拠りどころ、魂のオブジェとしてのイメージを広めたいと思っています。

Img4

◎石川県輪島漆芸美術館講演会「石と向き合う~硯のカタチ~」にて講師を務める

 

⑤和をつなぐメッセージリレー

伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。

 

☆第6回は、杵屋巳太郎さんから雨宮弥太郎さんへのご質問。 

伝承が絶えてしまうことを、ふと不安に感じたりはしませんか。 

 

☆雨宮弥太郎さんからのご回答

私は、どちらかというと比較的楽観的に考えています。日本語が絶えない限り、また自然に対する微細な感性を日本人が失わない限り、墨の表現に対する憧れが失われることはないと信じています。そして「和」の原風景の一要素としての硯も記憶から失われることはないと思います。もちろん、作り手が誇りを持ち、その価値を時代に応じてアピールし続ける努力を忘れてはいけません。

 

〔作品展のご案内〕

雨宮弥太郎 硯展

2014年 1月29日(水)~2月4日(火)

東京 日本橋三越本店 本館6階 美術サロン

 

2013年04月30日



【和をつなぐメッセージ】第5回 杵屋巳太郎さん(歌舞伎音楽・長唄三味線)

いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。
和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。

2013年01月29日

【和をつなぐメッセージ】第4回 中村信喬さん(人形作家)

伝統文化を未来へつなぐお仕事をなさっている方々は、
どのようなことを考えていらっしゃるのでしょうか。
これからの伝統文化を担うため、さまざまな分野で
ご活躍の方々に、等身大のご意見を伺うFive Questions。
和をつなぐメッセージを季刊でみなさまへお届けします。

第4回は、人形作家の中村信喬さんからの
和をつなぐメッセージをお届けします。

2012年12月25日

主催 渋谷区文化総合センター大和田  
協賛 公益財団法人 ポーラ伝統文化振興財団

2012伝承ホール寺子屋   学習プログラム 後期第1回
 『狂言ワークショップ』 開催レポート

 12月9日(日)、渋谷区文化総合センター大和田にて、
『狂言』をテーマに、当財団の記録映画上映「狂言・野村万蔵-技とこころ」と、
参加型講座-狂言ワークショップを開催しました!

2012年10月31日

【和をつなぐメッセージ】第3回 伊那人形芝居保存協議会 さん

伝統文化を未来へつなぐお仕事をなさっている方々は、
どのようなことを考えていらっしゃるのでしょうか。
これからの伝統文化を担うため、さまざまな分野で
ご活躍の方々に、等身大のご意見を伺うFive Questions。
和をつなぐメッセージを季刊でみなさまへお届けします。

第3回は、伊那人形芝居保存協議会 柴登巳夫会長さんからの
和をつなぐメッセージをお届けします。

<プロフィール>
  伊那人形芝居保存協議会
  1984年 伊那人形芝居保存協議会 設立
  この協議会は、伊那の谷に残り伝えた4つの人形座
   (黒田人形・今田人形・早稲田人形・古田人形)が
    1つの組織になり活動。1年に1回、4座が一同に会し、
  合同発表会を実施、研鑽。
  近年は、中学生のクラブも2校ずつ加わり発表し、
  若い後継者と共に活発に活動している。

[主な受賞歴等]
 1974年「下黒田の舞台」重要有形民俗文化財指定
 1975年「伊那の人形芝居」記録作成等の措置を構ずべき無形の民俗文化財指定
 2002年 伝統文化ポーラ賞地域賞
 2010年 ポーラ伝統文化振興財団記録映画 第46作
     「伊那人形芝居-明日へつなぐ伝承のチカラ」完成

伊那人形芝居保存協議会さんへのFive Questions
①最近のお仕事で印象に残っていること。

一昨年の第28回の伊那人形芝居の合同発表会に文化庁及び、
長野県の担当者が出席くださり、見ていただきました。
このことは協議会の具体的な活動状況を知っていただき、深く
ご理解いただく良い機会となりました。

伊那人形芝居保存協議会4

伊那人形芝居保存協議会1

◎写真 四座公演 右:飯田市立竜峡中学校 / 左:阿南町立阿南第一中学校 

②協議会の設立は、いつごろ、どのようなきっかけでしたか。
 
昭和50年(1975)代に入り、伊那谷に残っていた人形座は、共通の問題を
かかえていました。それは若い後継者が少なく、存続が難しい状態に追い込まれ
ていました。
特に、浄瑠璃を語る太夫と三味線を弾く人がいなくなってしまう危機に直面して
いました。
この状況を何とかしなければということで、日下部新一先生(郷土史家 1906~2001)
の呼びかけにより、4つの人形座が一同に会し、話合いの機会を持ちました。これが
同会の設立のきっかけとなりました。
同会の合同発表会も今年で30回となります。

③座右の銘は。
 
継続こそ力なり。

④伝統文化を未来につなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか。
 
若い後継者の育成。
伊那人形芝居保存協議会は、4つの中学校と2つの小学校のクラブ指導
にあたっています。30年以上も続いています。これにより、若い後継者が
育ち始めました。
また、社会に対し、広く理解していただき、応援を働きかけることも大切なこと
と思っています。
伊那人形芝居保存協議会2伊那人形芝居保存協議会3











◎写真 右:三味線研修 / 左:義太夫研修

⑤和をつなぐメッセージリレー
伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問を
つないでいきます。

☆第三回は、前回掲載の鶴澤藤蔵さん(人形浄瑠璃文楽三味線)から
伊那人形芝居保存協議会さんへのご質問。

現在文楽では隔年研修生を募集しています。文楽を見たことのない人も応募してきます。
特に語りや三味線は子供の頃から親しんでいないのでなかなか習得できないようです。
伊那では人形に関しては子供の頃から馴染んでおられるでしょうが、語りや三味線に
興味のある人はいますか?

☆伊那人形芝居保存協議会さんからのご回答。
伊那人形芝居では、2つの小学校、4つの中学校にクラブ学習を続けています。
その中から語りや、三味線に興味を持つ子供が出てくるのを待っているところですが、
なかなか出てきません。
語りや三味線にも挑戦する児童を待つのではなく、積極的に働きかけ、一緒に稽古する
機会を見出すよう、考えていきたいと思っています。


◎伊那人形芝居保存協議会さんは、第22回伝統文化ポーラ賞受賞者(2002年)です。
http://www.polaculture.or.jp/promotion/year.html

2012年10月31日

第32回 伝統文化ポーラ賞奨励賞受賞記念
林美音子 地歌リサイタル

 10月28日(日)昼過ぎまで降っていた雨も止み、
秋深まる京都府立府民ホール・ALTIで行われました林美音子さん 
地歌リサイタルへ行ってきました。
 
 林美音子さんは、柳川三味線の伝承・振興で平成24年度 
第32回伝統文化ポーラ賞奨励賞を受賞され、今般受賞記念リサイタルが
催されました。
 ロビーでは、ポーラ賞の賞牌・賞状が展示され、観客の皆さんがご覧に
なっていました。

 演目は「残月」、「たぬき」、「雪」の3曲で、演目「雪」にて
京舞井上流五世家元井上八千代師との夢の共演が実現いたしました。

 最初の演目「残月」は、林 美音子さんとお母様の林 美恵子さんとの
共演で、京都でのみ伝承される希少な「柳川三味線」の音色を楽しみました。

 二つ目の演目「たぬき」は美音子さんの独演で、地歌と柳川三味線の絶妙な
組み合わせが素晴らしかったです。

 最後の演目「雪」は、美音子さんの三味線、美恵子さんの箏に、伝統的な
座敷舞のスタイルで井上八千代師の京舞を見させてもらいました。

 日本の古都、京都ならではの受賞記念リサイタルが、盛会のうちに幕が下りました。

◎林美音子地歌リサイタルチラシ
公演チラシomote公演チラシura





















※林美音子さんは、第32回伝統文化ポーラ賞奨励賞受賞者です。
                                                           以上
                                                           (iida)

2012年08月20日

【助成先報告】細島みなと祭り(宮崎県日向市)・・新調された細島東若太鼓台デビュー!

7月13日から15日まで細島みなと祭りが盛大に行われました。

2012年08月17日

o○*.。+o●*.。o○*.。+o●*.。   開催レポート    +o●*+.。o○*.。+o●*+.。o○*.。

今年も東京国立近代美術館工芸館との共催イベントを7月23日(月)に開催しました!

 
今回の『MOVIE+TOUCH&TALK PART5』は夏休みということもあり、
東京国立近代美術館工芸館で開催している、「こども工芸館/おとな工芸館 植物図鑑」展に合わせ、
親子で参加!伝統工芸 映画の上映と工芸作品を見て、さわってみよう!

と題しまして、お子さんやお孫さんとご一緒に参加できるプログラムとさせて頂きました。


当日は暑い中、ご家族、お友達と、また、大人の方のみでもご参加頂けたので、
様々な方々にお越し頂き、ありがとうございました!

 

2012年08月17日

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平成21、22年 助成先
記録映画「フチのこころ~アイヌの女の手仕事」の製作プロジェクト  報告●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~●~ 

 

沖縄大学 須藤研究室が平成21,22年に当財団の助成を受けて制作した記録映画
「シネウプソロ (仮題「アイヌの女の手仕事」から改題)」が完成しました!

2012年7月7日開催の沖縄大学地域研究所フォーラムの中で試写され、
約100名の参加者が鑑賞しました。

 

沖縄大学1沖縄大学2

2012年07月26日

【和をつなぐメッセージ】第2回 鶴澤藤蔵さん(人形浄瑠璃文楽座・三味線)

伝統文化を未来へつなぐお仕事をなさっている方々は、
どのようなことを考えていらっしゃるのでしょうか。
これからの伝統文化を担うため、さまざまな分野で
ご活躍の方々に、等身大のご意見を伺うFive Questions。
和をつなぐメッセージを季刊でみなさまへお届けします。

第2回は、人形浄瑠璃文楽座・三味線 鶴澤藤蔵さんからの
和をつなぐメッセージをお届けします。

2012年05月28日

【和をつなぐメッセージ】第1回 築城則子さん(染織家)

伝統文化を未来へつなぐお仕事をなさっている方々は、
どのようなことを考えていらっしゃるのでしょうか。
これからの伝統文化を担うため、さまざまな分野で
ご活躍の方々に、等身大のご意見を伺うFive Questions。
和をつなぐメッセージを季刊でみなさまへお届けします。
 
第1回は、染織家 築城則子さんからの和をつなぐメッセージをお届けします。


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