2016年04月28日
【和をつなぐメッセージ】第17回 八重樫榮吉さん(仙台簞笥金具職人)
いま、伝統文化の各分野でご活躍の方々は、どのようなことを考え、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
「和をつなぐメッセージ」では、伝統文化の各分野の第一線でご活躍のみなさまが、
そのわざをどのように未来へ「つなぐ」ことを考えていらっしゃるのか、
共通の5つの質問Five Questionsを通して、等身大のご意見を伺っていきます。
和をつなぐメッセージは、季刊でみなさまへお届けします。
第17回は、仙台簞笥金具職人の八重樫榮吉さんからの和をつなぐメッセージです。
<八重樫榮吉 Yaegashi Eikichi プロフィール>
1979年 仙台市商工会議所功績賞
1995年 仙台市功労賞
2003年 伝統的工芸品産業功労者褒賞
2005年 伝統文化ポーラ賞地域賞
2010年 宮城県物産振興協会優秀技能賞受賞
2013年 宮城県卓越技能者表彰(宮城の名工)
2015年 労働大臣卓越技能者表彰(現代の名工)
2016年 内閣 平成28年 桜を見る会招待
①最近のお仕事で印象に残っていること。
昨年、平成27年3月に仙台市博物館で開催されました国連防災世界会議で仙台簞笥の展示と実演を行ったことです。外国の人向けに行われた実演で、龍、唐獅子、子供地蔵などの意匠を用いた金具づくりの実演をしました。様々な国から様々な人たちがきてくれて、好みも様々で作り手としてもおもしろい経験をさせていただきました。
私の工房では、お客様の要望を聞いて、一品ものの意匠を作ります。だから、このように多くの人たちの刺激を受けると、次の創作への刺激になります。
②この道を歩もうと決心したのは、何歳のとき、どのようなきっかけでしたか?
20歳のとき。
私は、9人兄弟のいちばん末っ子。幼い頃から家業であった仙台簞笥の金具を作る父の仕事を見て育ちましたが、反抗ばかりしていました。学校の先生の紹介で卒業後はホテルの住み込みの料理人になり、4年間働きに働いて、就職後初めて家に帰ったとき父に「この仕事、お前に一番向いているんだけどやってみないか」と言われました。
久しぶりに見た父はずいぶんと年老いたように見えて、その後ろ姿は泣いていたように見えたことを、いまでも覚えています。でも、まだ決心はつかなかった。それからしばらく経ってから、父に頼まれて植木屋さんへ行きました。立派な盆栽がたくさんあって眺めていると、そこのご主人が「これらの盆栽は、みんな一代でできるわけではないのですよ。何代もかけて、このような盆栽になるのです」と教えてくれました。その言葉に私は非常に感銘を受けました。「自分もこんなふうに、時代を越えてつないでいける仕事をやってみたい」と。そして私は家業を手伝うことを決心しました。そこのご主人は、帰るときに松の盆栽をひとつくれました。その植木屋さんとは、いまでも親交があります。そして私がオリジナルの意匠を作るヒントは、みんな山野草が教えてくれました。スミレ、イワシバ、イワカガミなど、いままで意匠化したのは数え切れないほどです。
③座右の銘は。
ものづくりとは、つねに自分との戦いである。
④伝統文化を未来につなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか?
宮城県内の高校で展示、実演と話合いをしています。
また、年に数回、民俗史料館で展示、実演を行い、多くの方々に見ていただき、ふれていただく機会をもうけています。
⑤和をつなぐメッセージリレー
伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないでいきます。
☆第17回は鶴澤友勇さんから八重樫榮吉さんへのご質問
作品をインターネットで見せていただき、胸がドキドキするほど感動しました。本も見せていただきました。このような素晴らしい伝統をぜひ、後世にも伝えてほしいです。
伝承される方はいらっしゃいますか?又、どのような精神を伝えていきたいと思われますか?
☆八重樫榮吉さんからのご回答
弟子はおりませんが、高校で講師を勤めるなど、若い人たちに見てもらう機会を大切にしています。
手わざは繊細で細やかな表現ができると思います。そして、やはり迫力が違います。これは、機械では表現できないと思っています。ぜひ一度、ご覧になってみてください。