2012年07月26日
【和をつなぐメッセージ】第2回 鶴澤藤蔵さん(人形浄瑠璃文楽座・三味線)
伝統文化を未来へつなぐお仕事をなさっている方々は、
どのようなことを考えていらっしゃるのでしょうか。
これからの伝統文化を担うため、さまざまな分野で
ご活躍の方々に、等身大のご意見を伺うFive Questions。
和をつなぐメッセージを季刊でみなさまへお届けします。
第2回は、人形浄瑠璃文楽座・三味線 鶴澤藤蔵さんからの
和をつなぐメッセージをお届けします。
<プロフィール>
鶴澤藤蔵 Tsuruzawa Touzou (人形浄瑠璃文楽座・三味線)
重要無形文化財人形浄瑠璃文楽(総合認定)保持者
1965年 大阪生まれ。曽祖父は七世竹本源大夫。祖父は鶴澤藤蔵。
父は文楽の切場を務める人間国宝九代目竹本源大夫。
1976年 十代竹澤弥七に入門。五代目名鶴澤清二郎を名乗る。
後に鶴澤清治門下となる。
1983年 朝日座で初舞台。
1996年 父・九代目竹本綱大夫襲名時より切場の三味線を務める。
2011年 二代目鶴澤藤蔵襲名
[受賞歴等]
2006年 国立劇場文楽賞文楽優秀賞
2011年 伝統文化ポーラ賞奨励賞
2012年 日本芸術院賞 他受賞多数
◎写真 2012年5月 『艶容女舞衣』酒屋の段
撮影 小川知子
鶴澤藤蔵さんへのFive Questions
①最近のお仕事で印象に残っていること。
昨年4月5月、二代目鶴澤藤蔵襲名披露公演で『源平布引滝』九郎助住家の段という
大曲を務めさせて頂きました。祖父鶴澤藤蔵のレコードを繰り返し聴き近づこうと
しましたが思うようにはいきませんでした。
今後も、精進していきたいと思っております。
◎写真 2011年5月襲名披露『源平布引滝』
竹本源大夫・鶴澤藤蔵
撮影 小川知子
また、『木下蔭狭間合戦』竹中砦の段壬生村の段の復曲演奏をさせて頂きました。
これにつきましては将来的に文楽公演にかけられるよう残りの復曲にも心を置いて
おります。このような活動と文楽切場を長年務めたことが評価され、本年日本芸術院賞を
受賞させていただきました。
◎写真 日本芸術院賞授賞式にて
②この道を歩もうと決心したのは、何歳のとき、どのようなきっかけでしたか。
11歳。父に太夫か三味線弾きになるかと言われ子供でしたが色々考えました。
三味線弾きでした祖父のレコードを聴き、その音色の深み艶やかさに憧れ
この道に進もうと決めました。
③座右の銘は。
「意味のない撥は一撥もない」
これも11歳の時入門した十世竹澤弥七師匠の言葉です。ただ三味線という楽器を弾く
のではなく、浄瑠璃の中身を弾けということだと思っております。
④伝統文化を未来につなぐために、いま、どのようなことをなさっていますか。
現在では古典は難しい理解しにくいと敬遠される方が少なからずおられます。
後継者を育てることも勿論大事なことですが、より多くのお客様に理解していただく事も
大切なことと考えております。公演の前に演目説明会をしたり、楽屋案内をして興味を
もってもらえるよう努めております。
⑤和をつなぐメッセージリレー
伝統文化の様々な分野の方が「つなぐ」をキーワードに、リレー形式で質問をつないで
いきます。
☆第ニ回は、前回掲載の築城則子さん(染織家)から鶴澤藤蔵さんへのご質問。
私はデザインをする時に音色を大切な要素と感じて制作しています。縞ばかり織って
いますので、時には縞の線が弦に見えてきます。
浄瑠璃は日本の古典芸能の中でも人は介在しないだけに、音が大切と感じます。
特に大好きな近松の心中ものなどを演じる時の音色、緩急、など他の演目とは違うという
部分はありますか?
☆鶴澤藤蔵さんからのご回答。
近松の心中物といえば『曽根崎心中』が知られていますが、その中ノ巻 天満屋の段の
三味線の弾き出しは遊廓で真の恋に苦しむ遊女の心情をあらわしていて音色にも色気が
必要です。
また、廓を抜け出し心中にむかう段切ではお初・徳兵衛の切羽詰まった心情を表現する
ため特別な緩急が求められます。
『曽根崎心中』は昭和期の復曲ですが叙情的な曲調で三味線弾きとしては務めがいが
あります。