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お知らせ

2021年04月12日

 

ポーラ伝統文化振興財団では設立以来、わが国の貴重な伝統文化に貢献され、今後も活躍が期待できる個人または団体に対し、更なる活躍と業績の向上を奨励することを目的として、顕彰を行ってまいりました。 昨年40回を迎えた「伝統文化ポーラ賞」。この度、弊財団40年の軌跡と共に、過去ポーラ賞受賞された方々を随時ご紹介致します。

第12回 伝統文化ポーラ賞 特賞

 近藤孝「天津司舞の保存・伝承」

川﨑瑞穂(博士・東京電機大学大学院 ほか講師)

 好きであっても苦手であっても人を惹き付けてやまない「人形」。「人」の「形」をしていても「人」ではない存在。今でも人形といえば怖い都市伝説などがつきものですが、人形に「魂」を吹き込むことで生まれる文化の一つが「芸能」であるともいえるでしょう。平安時代には、「傀儡」(くぐつ)と呼ばれる人形で芸能を演じる人々(傀儡子)が、生き生きと芸能史の舞台に登場することとなりました。人形の芸能はその「呪術性」も特徴としており、現在でも聖性を帯びた人形が登場する民俗芸能が各地に伝わります。とりわけ、山梨県に伝わる「天津司(てんづし)舞」は、傀儡の伝統を今に伝えるとされる大変珍しい民俗芸能です。

天津司舞の「御姫様」(おひめさま)天津司舞の「御姫様」(おひめさま)

 山梨県甲府市小瀬町。春のうららかな陽が降り注ぐ、満開の桜の天津司神社からお祭りは始まります。「入魂の儀」が行われたのち、神社から運び出されるのは、顔に赤い覆いがある不思議な人形たちです。赤い布は人形が「御神体」であることを意味しており、人形の芸能が「聖なるもの」と関わってきた悠久の歴史を伝えてくれます。太鼓と笛の音に導かれて、人形たちは行列になって鳥居をくぐっていきます。人形たちの厳かなパレードは天津司舞が奉納される諏訪神社まで続きます。

諏訪神社の境内に居並ぶ人形たち諏訪神社の境内に居並ぶ人形たち

 舞台は幕で覆われた「御船」(おふね)と呼ばれる空間。そこに、にょきっと下から登場するのが人形たちです。手に持つのは笛や太鼓、ビンザサラといった楽器の作り物。ビンザサラは田楽と呼ばれる中世芸能を象徴する楽器であり、儀礼的な所作と演劇的な所作を併せ持つ人形の動きは、傀儡が田楽を演じる「傀儡田楽」の面影を遺します。

天津司舞の「御鹿島様」(おかしまさま)天津司舞の「御鹿島様」(おかしまさま)

 それぞれの演目は、緩やかな囃子《お舞いの曲》に乗った「お舞い」と呼ばれる舞ののち、テンポの速い囃子《お狂いの曲》に乗った「お狂い」と呼ばれる舞となり、また元の曲に戻るという形式を持ちます。数種類の演目がありますが、見目麗しい「御姫様」といささかコミカルな「鬼様」が登場する最後の演目は、とりわけ見るものを楽しませます。

天津司舞の「鬼様」天津司舞の「鬼様」

 歴史上、天津司舞は何度も中断と復活を経て今日に受け継がれてきました。いつの時代もその「人形」の尽きせぬ魅力が人々に復活の動機を与えてきたのでしょう。

 伝統文化ポーラ賞を受賞した近藤孝氏は、長らく「天津司舞」を主導し、地域の振興と伝統の継承に貢献されました。そして現在でも天津司舞保存会は、受賞時と変わらず、「天津司舞の保存・伝承」を主導し、地域の振興を支えています。

 

甲府市観光課HP

https://www.city.kofu.yamanashi.jp/welcome/saijiki/tenzushi.html

 



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