2020年12月25日
ポーラ伝統文化振興財団では設立以来、わが国の貴重な伝統文化に貢献され、今後も
活躍が期待できる個人または団体に対し、更なる活躍と業績の向上を奨励することを
目的として、顕彰を行ってまいりました。 本年で40回を迎えた「伝統文化ポーラ賞」。
この度、弊財団40年の軌跡と共に、過去ポーラ賞を受賞された方々を随時ご紹介致します。
第21回 伝統文化ポーラ賞 地域賞 秋葉神社祭礼 練り保存会「秋葉神社祭礼 練りの伝承」 川﨑瑞穂(博士・神戸大学特別研究員)
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衣装のモチーフ、仮面のモチーフ、音のモチーフ…など、民俗芸能には様々な「モチーフ」があります。多くの研究者がそれぞれのモチーフの意味や歴史を考えてきましたが、中には比較的容易に楽しむことができるものもあります。たとえば手に持つ「棒」に「悪魔や不浄を祓ひ、潔めるといふ信仰」を読み取ったのは、民俗芸能研究で著名な本田安次(ほんだやすじ)。「棒について」(1973)という文章では、「棒には古来神秘的なものがまつはつてゐた」として、「棒状のものを交差させることは、悪魔払ひになる」と述べています。 様々な「棒」が登場する祭礼に、高知県の秋葉神社(吾川郡仁淀川町別枝)にて行われる「秋葉祭り」があります。毎年2月11日に行われる、岩屋神社から秋葉神社に向かう華やかな行列(練り)によって知られており、身長の何倍もある「鳥毛」(とりけ)という毛槍(大名行列などで用いられる鳥毛の飾りをつけた槍)を投げ合うダイナミックな「鳥毛ひねり」は、この祭礼一番の見せ場となっています。 |
鳥毛ひねり |
天狗の面を被った役など、個性豊かな面々が練り歩く道中では、「サイハラ」と呼ばれる両端に紙の飾りがついた竹の棒を用いた「太刀踊」が演じられます。二列に並んだ踊り手が向かい合い、サイハラと太刀を打ち合わせて踊るもので、歌と法螺貝が心地よく響き渡ります。高知県には、棒や太刀をはじめ、長刀や鎌などを用いる「花取踊」(はなとりおどり)が数多く伝わり、同系統の芸能として注目されます。 |
太刀踊り 鼻高(天狗) |
さらに、「お神楽」とよばれるセクションでは、狐や獅子といった動物や異形のモノたちが輪になって舞います。乱打される打楽器の音と、簡潔な旋律を繰り返す笛の音が混ざり合い、「聖なるもの」との交歓の風景が眼前に広がります。 |
「お神楽」の狐 |
行列の途中には、「油売り」という道化役が登場し、サイハラを売って歩いたり、コミカルな所作で笑いを起こしたりと、祭りの場を和ませます。子どもから大人まで、幅広い層に親しまれているこの祭礼は、さながら大空を舞う鳥毛のように、これからも人と人とをつないでいくでしょう。 |
「油売り」 |
伝統文化ポーラ賞を受賞した秋葉神社祭礼練り保存会は、現在でも受賞時と変わらず、「秋葉神社祭礼練りの伝承」を主導し、地域の振興を支えています。 注:祭礼の開催日等につきましては、別途ご確認ください。
◇高知県吾川郡仁淀川町 産業建設課 「秋葉まつり」 https://www.town.niyodogawa.lg.jp/life/life_dtl.php?hdnKey=776 |