2020年11月25日
ポーラ伝統文化振興財団では設立以来、わが国の貴重な伝統文化に貢献され、今後も
活躍が期待できる個人または団体に対し、更なる活躍と業績の向上を奨励することを
目的として、顕彰を行ってまいりました。 本年で40回を迎えた「伝統文化ポーラ賞」。
この度、弊財団40年の軌跡と共に、過去ポーラ賞を受賞された方々を随時ご紹介致します。
第3回 伝統文化ポーラ賞 特賞
小泉重次郎「板橋・徳丸の田遊びの伝承」
川﨑瑞穂(博士・神戸大学特別研究員)
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各地に伝わる民俗行事の中には、「稲作」に関係する芸能や祭礼が数多く存在します。田植えに際して行われる歌舞が芸能化した「田楽」(でんがく)などは、「味噌田楽」や「おでん」(お田楽)といった馴染み深い言葉の中に、味わい深さとしても名残をとどめています。
また、元来「芸能」の芸(藝)には「うえる」、あるいは「まく」といった意味があり、農耕の「わざ」と「芸能」という「わざ」の間に、深い関わりがあることも暗示しています。
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徳丸の田遊び「田うない」
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稲作の所作を、田植えに際して行うのではなく春先に演じる「田遊び」もまた、農耕と密接に関わる芸能の一つです。正月(太陰暦で行う場合もあるため1~4月)頃、「予め」豊作を「祝う」ことで豊作になると考える「予祝」(よしゅく)の発想により、稲作の行程を順を追って演ずるのが「田遊び」と呼ばれる芸能であり、稲作が人々にとっていかに重要であったのかを教えてくれます。
稲作と縁遠くなったかにみえる東京23区内においてもなお、この「田遊び」を伝える地域があります。板橋区徳丸・北野神社と同区赤塚・諏訪神社では、2月の祭礼当日、神社拝殿前に設えられた「もがり」と呼ばれる舞台において、稲作を模した技の数々が演じられます。「福の種をまーこうよ」といった縁起の良い歌詞を、つい口ずさみたくなるような独特なメロディで歌うこの芸能は、牛によって田をならす所作を演じるユーモラスな演目「代かき」など、個性的な技の数々を伝えています。
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徳丸の田遊び「代かき」
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「徳丸の田遊び」と「赤塚の田遊び」、よく見比べ、聴き比べることで、様々な類似点と相違点に気付くことができるでしょう。とりわけ赤塚では、「もがり」の前で行われる天狗の舞(御鉾の舞)など、付随する多彩な演目も魅力的。「花籠」をつけた槍と太鼓の前に、弓(破魔矢)、男の子が乗った「駒」、そして獅子が順番に登場する「槍突き」。田遊びの伝える多彩な技をみると、子どもや稲の健やかな成長を祈る、この芸能を伝えてきた人々の温かな気持ちに触れることができます。
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赤塚の田遊び「駒」
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赤塚の田遊び「獅子」
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伝統文化ポーラ賞を受賞した小泉重次郎氏は、長らく板橋区の民俗芸能「田遊び」を主導し、地域の振興と伝統の継承に貢献されました。
注:祭礼の開催日等につきましては、別途ご確認ください。
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