2020年09月25日
ポーラ伝統文化振興財団では設立以来、わが国の貴重な伝統文化に貢献され、今後も
活躍が期待できる個人または団体に対し、更なる活躍と業績の向上を奨励することを
目的として、顕彰を行ってまいりました。 本年で40回を迎える「伝統文化ポーラ賞」。
この度、弊財団40年の軌跡と共に、過去ポーラ賞受賞された方々を随時ご紹介致します。
第20回 伝統文化ポーラ賞 地域賞
鷺の舞保存会「鷺の舞の伝承」
川﨑瑞穂(博士・神戸大学特別研究員)
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ヤマトタケルの神話にあるように、古代から白鳥(しらとり)は信仰の対象でした。民俗学者・谷川健一の言葉を借りれば、「天空高く渡っていく白鳥のすがたは、古代人の網膜に消しがたい印象を残していた」(『神・人間・動物―伝承を生きる世界―』)と言えます。鳥の扮装で演じる民俗芸能は日本各地に伝承されていますが、その中に鷺(サギ)の作り物を身につけて舞う「鷺の舞」(あるいは鷺舞)という民俗芸能があり、美しく翼を広げるその姿は、日本のみならず海外からも注目されています。
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「鷺の舞」
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山口県に伝わる「鷺の舞」は、八坂神社(山口市)で7月20日から27日にかけて行われる「山口祇園祭」の内、初日の20日にのみ行われています。猟師を表現するともいう「しゃぐま」、鞨鼓(かっこ)という太鼓を打つ「かんこ」、そして「鷺」という三つの役(各2名)から構成され、「かんこ」の周りを、「鷺」と「しゃぐま」が回ります。伴奏の楽器は笛と締太鼓からなり、笛は舞の初めから終わりまで吹き続けますが、笛の旋律の切れ目で締太鼓が打たれます。「かんこ」が鞨鼓を打ちつつジャンプすると、こだまのように後から「鷺」が羽をパタパタと動かし、その鷺の動きを後追いして、締太鼓を2回打つというパターンの繰り返しです。簡潔な動きの繰り返しに、儀礼としての性格が表れています。
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「かんこ」の使用する楽器「鞨鼓」(かっこ)
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「鷺の舞」のように鷺が登場する芸能は、日本ではいくつかの地域に伝わっており、とりわけ島根県津和野町の「鷺舞」は民俗芸能の中でも広く知られているものの一つです。中世、京都の祇園社(現在の八坂神社)の「御霊会」(ごりょうえ:現在の祇園祭)において、「鵲鉾」(笠鷺鉾:かささぎほこ)という出し物に付随した鷺の扮装で舞う芸能が、各地に伝わったものであるとも考えられています。
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「鷺の舞」に使用される鷺の頭
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伝統文化ポーラ賞を受賞した鷺の舞保存会は、現在でも受賞時と変わらず、「鷺の舞の伝承」を主導し、地域の振興を支えています。
注1:祭礼の開催日等は別途ご確認ください。
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