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お知らせ

2019年09月10日

【映画解説(伝統芸能部門)講師のご紹介】

三浦顔写真トリミングimg263映画解説では、弊財団が制作した記録映画に
ついて、各分野の専門家にご寄稿いただき、
映画の見どころやを背景知識などを読者の
皆さまにお届けしております。

来月10月からは、三浦裕子先生を講師にお迎え
し、これまでご紹介してこなかった伝統芸能
分野の映画解説を連載いたします。

三浦先生は能・狂言がご専門で、武蔵野大学
で教鞭を執られるほか、武蔵野大学能楽資料
センター長も務められています。能・狂言をわかりやすく解説した入門書のご執筆や、
能・狂言の楽しみ方や魅力を伝えるイベントへのご出演など、幅広いご活動を展開して、
普及に尽力されています。

今回は、連載に先立ちまして、三浦先生にお話をうかがいました。
三浦先生の映画解説の初回は、10月10日を予定しております。
どうぞご期待くださいませ。

...

財団:伝統芸能の魅力について教えてください

三浦先生:
 一口に伝統芸能と言っても、平安時代の雅楽から江戸時代の人形浄瑠璃文楽・
歌舞伎まで、多種多様なものがあります。私が専門としている能・狂言(能楽)
に引き付けてその魅力を考えると、音楽・舞踊・演劇・美術といった諸要素が
高度に洗練され、それが不可分に結び付いた総合芸術であることがあげられると
思います。室町時代に基礎を築きましたので、先行芸能である雅楽・声明などの
影響を受け、後代芸能の人形浄瑠璃文楽・歌舞伎に影響を与えた点など、芸能史
の流れのなかでちょうどよい立ち位置にあるのも興味深いところです。


財団:三浦先生のご専門・現在の興味関心について教えてください

三浦先生:
 現在は、近代の能・狂言について強い関心を抱いています。それは、初世梅若実
(1828~1909)(現在の四世梅若実氏[シテ方観世流能楽師・日本芸術院会員・人
間国宝]の曽祖父)が幕末から明治末期までの60年間にわたって綴った日記『梅若
実日記』の刊行に際して編集委員として携わったことがきっかけです。この『日記』
を通じて、明治維新の動乱期に能・狂言の役者がどのように困難を克服したのかを
知り、当時と現代の能・狂言との違いを意識するようになりました。芸能は人間の
身体を通じて伝承されていくものですから、当然、変化を伴うものです。どのよう
に変化するのか、それに時代がどうかかわってくるのかなどを、総合的視野をもっ
て考えていきたいと思っています。


財団:当財団の伝統文化記録映画についてコメントをお願いします

三浦先生:
 伝統文化を記録する映画を長年にわたり制作し、映写会などを通じて公開して
いるポーラ伝統文化振興財団の活動は非常に有意義なものと思います。学生時代
(四半世紀以上前になります)、能・狂言を勉強したいと思いつつも、どうアプ
ローチすればよいのかわからず、そのような折に「狂言師・三宅藤九郎」の映写
会に行った記憶があります。今となっては懐かしい思い出ですが、私を能・狂言
の世界に導いて下さった一つの機会となったものでした。
 財団が制作した伝統芸能の映画は4本あります。伝統工芸26本、民俗芸能18本に
比べると少ないものの、4本のうち能1本、狂言2本、文楽1本と、ほとんどが能・
狂言であることが私にとっては大変心強いことです。来月から、これらの映画の
魅力を沢山ご紹介していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。



■執筆者 三浦 裕子(みうら ひろこ)

<経歴>
武蔵野大学文学部教授、同大学能楽資料センター長。
東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学大学院音楽研究科修士課程修了。
武蔵野女子大学(現在の武蔵野大学)能楽資料センター助手、
同大学文学部講師を経て現職。

<受賞歴>
名古屋文化振興賞[評論の部]受賞。

<おもな著書・共著>
『はじめての音楽史』(共著。音楽之友社、1996年)
『能・狂言の音楽入門』(音楽之友社、1999年)
『初めての能・狂言』(ショトル・シリーズ、小学館、1999年)
『梅若実日記』(梅若実日記刊行会・編集委員。監修=梅若六郎・鳥越文蔵、全7冊、
  2002年~2003年、八木書店)
『面からたどる能楽百一番』(淡交社、2004年)
『日本音楽基本用語辞典』(共著。音楽之友社、2007年)
『能・狂言』(学校で教えない教科書シリーズ、日本文芸社、2010年)


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