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2018年05月15日

画像1:修復用に製作した竹釘

仏像は、仏教が日本に伝来した6世紀より、国内で連綿と造られ続けてきた信仰対象像です。日本の仏像は、豊富にあった樹木を素材とした木彫仏が圧倒的に多く、古いものは修理を重ねながら、千年以上の月日を経て現在まで大切に守られてきました。また、明治時代以降になると、仏像は文化財としての側面も併せ持つようになり、昨今、仏像修理を専門とする修復家たちには、伝統的な技法と文化財の修復理念を併せた処置を施すことが求められています。
【写真1:仏像修復用に製作した竹釘】

画像2:江戸時代の仏像の頭部を解体した様子

仏像を造る技術も、伝統的な技法が長く受け継がれてきました。解体修理をすると、その技術を細かい部分でも感じることがあります。その一例をご紹介します。

木を寄せ合わせて造られた仏像は、接合に鎹や釘を使用します。釘は、鉄製や銅製の他に竹製のものが使われることもあります。修復時にも竹釘を新調して使用することがあるため、修復家は自身でこれを製作します。この竹釘ですが、先端に向けてただ細く尖らせるだけではなく、一つの面に表皮の部分を残すひと工夫をしておきます。表皮の部分は堅いので、残しておくことによって折れにくくなるのです。
【写真2:江戸時代の仏像を解体した様子(頭部)】

画像3:拡大(竹釘を使用している) この表皮を残した竹釘ですが、仏像を解体すると中から同じように表皮を残した同じ形状の昔の竹釘が出てきます。様々な時代の仏像から、同形状の竹釘が出てくるのです。古くから、仏師や修理に携わった人々は皆同じ技法で竹釘を作っていることがわかります。
【写真3:拡大(竹釘が3本使われている)】

画像4:修復の様子 些細な事例ではありますが、修復作業を通じて過去との繋がりを感じることもあるのです。仏像修復家は、大切に残されてきた仏像を、技術も含めて現在から未来へと繋げるために修理に勤しみながら日々技術向上にも励んでおります。
【写真4:修復の様子】

小室 綾

京都造形芸術大学歴史遺産学科文化財科学・保存修復コース卒業。
卒業後、吉備文化財修復所に修復所員として勤務。
現在は、仏像修復家として寺院など現地での修理を中心に活動している。


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