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お知らせ

2018年04月02日

 

秋田県鹿角市花輪では、毎年8月16日~20日にかけて幸稲荷神社(さきわいいなりじんじゃ)の例大祭が行われます。特に8月19日~20日は通称「花輪ばやし」といい、各町の囃子を乗せた豪華絢爛な十台の山車が、二日間ほぼ徹夜で巡行します。  
高久  

秋田県鹿角市花輪は、秋田県の北東部、奥羽山脈の懐に形成された断層盆地(鹿角盆地)に位置し、東側は岩手県の県境と、北は青森県と県境を接します。

 花輪の8月は、花輪ねぷた(8月7日、8日)から始まり、個々の家の先祖祭りである盆行事(8月13日~16日)、「花輪祭典」とも呼ばれる幸稲荷神社の例大祭(8月16日~20日)、花輪の町踊り(8月26日~9月8日)と、次々に民俗行事が行われ、総して「花輪祭り」と称します。19日~20日に屋台で演奏される祭囃子が花輪囃子です。以前は「はやし」や「ギオンばやし」といわれていましたが、昭和以降全国的に知られるようになり、「花輪囃子」「花輪ばやし」という呼称が生まれました。現在では「花輪ばやし」が例大祭の通称として呼ばれることが多くなっています。ここでは、例大祭のことを「花輪祭典」、囃子のことを「花輪囃子」と称してお話します。
 
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一つの囃子を演奏するのに同じ町の人々によって伝承されていることが多いのですが、花輪囃子は太鼓と鉦は各町の若者、笛と三味線は近隣地域に住む「芸人さん」と呼ばれる人々によって演奏されます。

各町の若者は子どものころから演奏を聞いておりリズムは覚えているため、小学生になって本格的に稽古を始めると、すぐに叩ける場合も多いそうです。はじめは、3列目の「中太鼓」から叩きはじめ、花形である「大太鼓」の演奏を目指して町内の若者たちが切磋琢磨して稽古します。若者会は42歳で卒業します。30代以降は祭りの運営が中心となるので、囃子の奏者は10代~20代が中心となり、活気あふれる演奏をします。
 
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 一方「芸人さん」は、長い人だと60年以上同じ町で演奏しています。「芸人さん」はそれぞれ師匠がおり、師匠から個別に笛や三味線を習って、師匠の采配で演奏する町の屋台が決定します。師匠から仕込まれる芸はとても厳しいものだったといいます。「芸人さん」の系譜をたどっていくと、「あやめの市」という名にあたります。「あやめの市」は座頭であったといい、「芸人さん」はその系譜上にいます。昭和60年代頃までは盲目の奏者も「芸人さん」を務めていました。現在の芸人に座頭はいませんし、本職を持ちながら花輪祭典のときだけ笛や三味線を演奏していますが、以前は芸を生業としている人たちが演奏していました。

このように花輪囃子は、年若く情熱的な演奏をする太鼓と鉦の奏者と、長年にわたり同じ町で演奏することで、その町の囃子の特徴を町の住民よりもよく知る「芸人さん」によって伝えられています。情熱だけでは崩れてしまうかもしれない囃子のクオリティを「芸人さん」がひっぱり、町の若者たちが若さとパワーある演奏で訪れた見物客たちを魅了します。技術と情熱が混在した花輪囃子をぜひ一度ご覧ください。

なお花輪祭典は、2014年に「花輪祭の屋台行事」として国指定重要無形民俗文化財に指定されています。
 

 

高久舞(たかひさまい)

國學院大學文学部非常勤講師。

 

日本大学芸術学部演劇学科卒業後、國學院大學大学院文学研究科にて民俗学を学ぶ。

20163月に國學院大學にて学位取得(民俗学)。専門は民俗芸能、伝統芸能。

201712月民俗芸能学会「本田安次賞奨励賞」受賞。

 民俗芸能・伝統芸能の研究とともに若手邦楽グループ「和っはっは若衆組」メンバーとして邦楽・日本舞踊のレクチャー公演を行っている。


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