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2017年12月20日

【ブラジル国レジストロの灯籠流し】

 1908年から日本人のブラジル移住がはじまり、来年はブラジル日本移民110周年となります。評論家の大宅壮一が「明治の日本が見たければブラジルにいけ!」との名セリフを残したという話もあるほど、ブラジル日本移民社会には初期の移民たちが持ち込んだ明治気質が色濃く残り、現在でも遠く離れたブラジルで日本伝統文化を継承しようと試みている人々がいます。

 サンパウロ市から約180キロ南西にあるリベイラ川のほとりに位置するレジストロ市では、毎年11月に灯籠流しを行い、先没者への慰霊法要などを通じて日本の文化をブラジル社会へ広めています。

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灯籠流しは、一般的にはお盆に行われる送り火の一種であり、死者の魂を弔って灯籠を海や川に流す日本の伝統行事の一つです。では、なぜブラジルでは11月に行うのでしょうか?実は11月2日カトリック教国のブラジルは『死者の日』を迎えます。ポルトガル語で「Dia de Finados」。この日は全国の学校、職場などが休みとなり、多くの人が墓地を訪れ死者の魂のために祈りを捧げます。この死者の日をブラジルに移民した日本人やその子孫である日系人たちは「お盆」と称し、カトリック教徒でなくてもお墓参りをして先祖や先没者を慰霊するのです。
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この灯籠流しは、今年で63回目を迎えます。1955年、リベイラ河で亡くなった水難事故者に対して日蓮宗の僧侶が「南無妙法蓮華経」の7字を当てた7基の灯篭を流したことから始まりました。現在ではレジストロ日伯文化協会が引き継ぎ、日蓮宗や市役所などと協力して開催されています。

 灯籠流しの催しは二日間にわたって開催され、初日はレジストロ日伯文化協会の和太鼓や民謡大和会のダンスなどが披露されます。2日の午後6時から慰霊法要、そして7時から灯籠流しと続きます。その慰霊法要の前には、日蓮宗徒らが船で川を下りながら太鼓を鳴らし読経をします。リベイラ川を清める儀式です。その後、河岸に建立されている水難犠牲者追悼碑の前で先没者慰霊法要が行われます。法要には、日蓮宗徒だけでなく、ブラジルらしくキリスト教などの宗教団体も宗派の枠を超えて参列し、参列者が順番に祭壇へ線香を捧げます。

 会場周辺にはヤキソバに天ぷら、寿司などの屋台や日用品などを販売する露店も出ます。会場中央には盆踊り用の舞台も設置され、日系人や日本文化に興味があるブラジル人たちがこぞって盆踊りに参加します。フィナーレには花火が盛大に打ち上げられます。

このように灯籠流しや慰霊法要を通じて、日本文化や「先没者の方々のおかげ」や「御先祖様」といった日本の「こころ」を継承してゆこうと試みているのです。

 

 

加藤里織 プロフィール

 JICA横浜海外移住資料館での展示ガイドや帆船日本丸記念財団で学芸補助をしながら、2014年3月神奈川大学大学院博士前期課程修了。同年4月より神奈川大学大学院博士後期課程に在学。2015年2月から2016年2月までサンパウロ大学 哲学・文学・人間科学部大学院(ブラジル)に留学し、帰国後もブラジルと奄美を行き来しながら「ブラジル奄美移民」をテーマに研究を行なっている。

 


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