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お知らせ

2018年02月01日

【映画解説(工芸部門)講師のご紹介】

プロフィール写真弊財団では、専門家にご寄稿いただき、記録映画の見ど
ころを解説していただいております。

今月からは、民俗芸能の映画紹介(毎月10日)に加え、
伝統工芸の映画解説(毎月25日)もスタートいたしました。

今回は、染織関係の映画解説(全6作)をしていただく、
染織文化研究家の大友真希先生にお話をうかがいました。


(以下、大友先生:先生、財団職員:財団)

...

[伝統染織の魅力について]

財団:伝統染織の魅力は、なんでしょうか?

先生:日本には、実に多種多様な伝統染織があります。それらが完成品において各々の魅力
    をもつことは言うまでもないのですが、それらを生み出すつくり手たちの手仕事への姿勢
    や信念にも心がひかれます。

財団:つくり手たちの手仕事への姿勢や信念ですか・・・なんだか深いですね。

先生:現代において、機械化した効率的な生産ではなく、手間と時間のかかる伝統染織を選び
    継続していくには、つくり手の強い意思や働きが確実にあります。
    そうした「染め・織り」への「思い」のようなものが完成品の深みを増しているのではと思います。

財団:たしかにそうですね。地道な手仕事で作られた着物などは、着たら思わず背筋が伸びま
    すし、大切にしなくてはと思います。

先生:伝統染織というと着物のイメージがあると思いますが、なかにはバッグ、財布、帽子など
    日常的に使えるプロダクトも数多くあります。工芸品は「使う」ことでその良さがわかります
    ので、小物からでも、生活のなかで使ってみるといいと思います。


[ポーラ伝統文化振興財団の記録映画の見所]

財団:ポーラ伝統文化振興財団の記録映画の見所は、どんなところですか?

先生:どの映画も、伝統染織を受け継ぐ方々の「染め・織り」への真摯な姿勢や強い信念が垣間
    みられる場面が見所だと思います。

財団:ありがとうございます。実は弊財団の映画は、ただ製作工程を記録するだけでなく、つくり手
    の人柄や、創作に対する信念、伝統に向き合う心などが伝わるような映像づくりに力を入れ
    ています。

先生:そうでしたか。もちろん、製作工程をわかりやすく解説しながら、つくり手が素材と向き合う姿
    や熟練した手技を丁寧に記録されているのも素晴らしいです。なかには、もうお亡くなりにな
    られて、お目にかかることが叶わない、つくり手の姿や技が映像で残されているものもある
    ので、染織資料としてもとても貴重です。


[ご自身の研究について]

財団:ご自身の研究について教えていただけますか?

先生:日本とメキシコの染織文化を研究しています。

財団:えっ、日本とメキシコの染織文化ですか?興味津々です!もっと具体的に教えて下さい。

先生:日本では、草木の皮などの繊維を糸にして織った布、「原始布(げんしふ)」といわれる織物
    を対象に、その生産方法や技術伝承を調査しています。メキシコでは、オトミ族の村でつく
    られてきた、竜舌蘭の一種「マゲイ」の織物について調査をしています。

財団:原始布ですか!過去の伝統文化ポーラ賞受賞者の中に、山村精さんという原始布の復元
    に尽力された方がいらっしゃいます。木綿や麻の織物が登場する前の古代の人々から伝わ
    ってきた貴重な技術ですよね。まさかメキシコにも似たような織物があるとは驚きです。

先生:そうですね。大変興味深く研究しています。

財団:先生は今の研究をなさる前に、作り手として染織の制作技術も学ばれていたんですよね?

先生:はい。大学時代は美大でテキスタイルデザインを学んでいました。
    1~2年生で染織の基礎技術を習得した後、卒業制作ではジャガード織機を使って織物作品
    をつくりました。

財団:そうでしたか。大学時代に制作技法を学ばれた経験は、きっと今の染織研究につながってい
    らっしゃるんでしょうね。

先生:とても役立っていると思います。染織では、とりわけ「織布」の工程が注目されがちですが、
    織り仕事に至るまでにはいくつもの工程があって、ここにも多くの時間と労力が費やされます。
    糸づくりからする場合は一層大変です。

財団:なるほど。

先生:染織について調査・研究をする際、その大変さを体で理解していることは大事だと思います。
    そのため、メキシコでも日本でも、調査させていただく方々の仕事に参加させていただくこと
    が多いです。


[今後について]

財団:先生の今後について教えて下さい。

先生:今後も日本全国の染織工芸産地を訪れ、さまざまな「染織の姿」を見ていきたいと思います。
    また、いつになるか分かりませんが、日本とメキシコの染織文化を両国に紹介できるような
    活動ができればと考えています。

財団:先生、貴重なお話をどうもありがとうございました。



■大友真希先生
染織文化研究家。多摩美術大学にてテキスタイルデザインを学ぶ。2008年よりメキシコに滞在し
インディヘナの染織文化を調査。帰国後、日本国内の染織工芸産地を訪れフィールドワークを行
い、技術伝承における「風合い」の経験・感覚的認識について探求をしている。現在、東京・神奈
川の自治体で学芸職に従事しながら日本・メキシコを中心とした染織文化の調査・研究を行って
いる。

<経歴>
1980年 東京生まれ
2004年 多摩美術大学美術学部生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻 卒業
2009年 メキシコ国立人類学歴史学学院(ENAH)留学(~2011年)
2014年 神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科修士課程 修了

<執筆歴>
『布のゆくえ–久高島の衣裳にみる−』多摩美術大学テキスタイル研究室助手副手展、2006年
「それ自体が巨大な織物であったメキシコ」『Águila y Sol』No.28、日墨交流会、2011年
「民具短信」『民具マンスリー』4月号、神奈川大学日本常民文化研究所、2017年



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