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お知らせ

2018年06月04日

 

越前和紙の里である越前市五箇地区は、福井県の北部、緑豊かな山々に囲まれた山間の地に位置します。五箇は不老(おいず)・大滝(おおたき)・岩本(いわもと)・新在家(しんざいけ)・定友(さだとも)の五つの集落から成り、古くより紙漉きを生業として暮らしてきました。

大瀧神社

越前和紙の発祥は定かではありませんが、五箇を流れる岡太川(おかもとがわ)の上流から女性が現れて里人に紙漉きの技を伝えたという伝承があり、これは五箇の地に紙漉きの技術を持った渡来人が移り住んだことを示唆すると考えられています。女性は紙祖の女神「川上御前」として岡太神社(おかもとじんじゃ)に祀られ、今も里人の崇敬を集めています。
この五箇の地に今年、1300年の大祭を迎える神社があります。泰澄大師の創建と伝えられ、五箇地区の紙漉き業者から紙祖の神として信仰を集める女神をともに祀る大瀧神社(おおおたきじんじゃ)です。【大瀧神社】

里宮鳥居

祭りは例年5月3日から5日にかけて、地元の人たちの手で大切に執り行われています。大祭の年である今年は5月2日から5日、準備期間を含めると山の雪が解けた頃から、里は神迎えのため静かな熱気に包まれていました。【里宮鳥居】

  奥の院

そして5月2日、ふれ太鼓が里に響き、山中の奥の院から神々を里宮に向える「お下り(おおり)」の神事で祭りが始まります。お峯天狗と呼ばれる天狗面の先払いで神社を出発し、駕与丁番(かよちょうばん)と白装束姿の「白丁(はくちょう)」に守られた大瀧神社、岡太神社、八照宮の三基の神輿が九十九折の山道を奥の院に向い、里人から「お峯(おみね)」と呼ばれる大徳山山腹の奥の院三殿から里宮へ、神様をお迎えするのです。【奥の院】

  法華八講  3日には神仏習合の古式を伝える「法華八講(ほっけはっこう)、これは法華経八巻を八座に分け、問答することで仏教の心理を明らかにするという儀式法要で、岡太神社・大瀧神社では大祭の年のみ行われます。そして「湯立神事(ゆたてしんじ)」と続き、夜には奉納ライブが行われます。【法華八講】
   神輿渡御①

4日の例大祭では、紙祖の女神「川上御前」が里人に紙漉きの技を伝授する様が地元の小学生による無言の紙能舞で演じられ、さらに里人が伝授された技を演じる、これも小学生による紙神楽が奉じられます。

【神輿渡御】
  最終日である5月5日には五箇地区を神輿が渡り、再びのふれ太鼓の後、神様を奥の院にお送りする「お上り(おあがり)」の神事、里宮へと戻った里人の手締めで4日間にわたる大祭は終了するのです。
 

チョーコ、チョーコ、チョーコーとーえー、

神と別れりゃ悲してならぬ

紙の神様 川上御前

今も栄える神の里

 

奥の院にご神体を納めた空の神輿を担ぎ山を下りる人々が唱和する「松坂」という唄です。お峯への参道整備や神社の清掃、幟の準備などすべて里人の手で営まれる昔ながらの紙の里の神まつりが、これからも変わらず続けられることを願っています。

中川智絵
紙の文化博物館 学芸員

 


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