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お知らせ

2018年04月16日

古代東アジアの儀礼音楽について、国家制度の視点から研究しています。中国の儀礼音楽は日本や朝鮮半島にも大きな影響を与えましたが、その歴史的背景を知ることは、わたしたちの日本理解を助けるものにもなるでしょう。
こうした儀礼音楽の研究をする前は、東アジアの軍事・財政史に興味がありました。そうした軍事、財政をはじめとする国家制度の視点から、東アジアの音楽史を新たに読み解いてみようというのが、私の研究スタンスです。

上記の研究スタンスは、音楽を芸術の視点のみからとらえた場合、邪道と映るかも知れません。しかし、新しい研究は、それまで人が忌避して手をつけてこなかったところから始まります。日本の東アジア史研究は、軍事・財政史に多くの蓄積があるので、自分がその方面の勉強をしていた頃は、偉大な先人の残した枠組みの隙間埋めをしていたように思います。今は新たな視点から、音楽史を再構築していくことで、そこから解放されつつあるというのが、私の正直な思いです。

戸川先生

このように国家制度の視点から日本の儀礼音楽をみると、従来の研究は、個別の楽曲・楽器等に焦点をあてたものであり、当時それが演奏される場が如何なるものであったのかということに、あまり深い配慮がなされてこなかったように思います。
その原因は、特定の儀礼音楽のみに焦点をあてた個別研究が戦前から蓄積されたのに対し、その演奏の場である王朝儀礼の研究が脚光を浴びるのは戦後、なかでも歴史学が文化人類学等の影響を受けた80年代前後からであったためでした。
こうした儀礼と音楽を結びつける新たな視角から、東アジアにおける儀礼音楽の実態を明らかにできれば、いわゆる日本固有の伝統音楽とされているもののうち、何が中国、朝鮮半島と共通し、何が真に特異なものなのかを明確にする一助となるでしょう。
例えば、古代中国の儀礼音楽は、皇帝が中国に君臨し、周辺国を服属させていることを音楽によって表現するものでした。日本の儀礼音楽も、こうした中国の儀礼音楽の影響を受けています。ただし、日本では、大陸からもたらされた外来音楽を天皇儀礼の中に新たに位置づけ直し、自国を中心とする新たな儀礼音楽を創ったところに大きな特徴がありました。
一方、朝鮮半島では、君主である王が、中国皇帝より継続的に冊封を受けていたため、日中と異なるユニークな儀礼音楽が創られていきます。このように伝統文化を国際的に俯瞰する研究を続けていけば、日本の儀礼音楽を東アジアの中に位置づけ、とらえ直していくことにもつながっていくように思います。
そうした比較研究を通じて、日本における伝統文化の理解をさらに深めていきたいというのが、私の願いです。

戸川 貴行(とがわ たかゆき)

日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)、愛知大学国際中国学研究センター研究員などを経て、現在、お茶の水女子大学基幹研究院人文科学系准教授。平成24年度東方学会〈内閣府所管〉賞受賞。数々の著作を発表しているが、主な論文としては、『東晉南朝における傳統の創造』(汲古叢書)が挙げられる。平成29年度公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団の助成事業にて、「前近代東アジア儀礼音楽の比較研究」が助成採択。

 

 


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