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お知らせ

2017年10月10日

【映画解説(民俗部門)講師のご紹介】

川﨑先生写真10月より、毎月10日を「映画の日」とし、弊財団の記録
映画の丸分かり解説を、専門家の先生にしていただき
ます。

今回は民俗芸能部門(全18作)の映画解説をしていた
だく、川﨑瑞穂先生にお話をうかがってきました。

(以下、財団職員:財団、川﨑先生:先生)

...

[民俗芸能の見所について]

財団:民俗芸能はどんなところが見所ですか?

先生:同じジャンルの民俗芸能でも、地域ごとに違いがあって、同じものは全くないという多様性
    が面白いと思います。

財団:「多様性」ですか!ポーラ・オルビスの理念として、「多様性を認める」というものがあります。
    内面の美を目指す弊財団にとって、やはり、多様性は重要なキーワードですね。民俗芸能
    の多様性とは、どのようなものでしょうか?

先生:そうですね・・・例えば、獅子舞。隣接した二つの地区の獅子舞を比べても、コミュニティーが
    異なるだけで衣装、舞踊、囃子などが全く違うことがよくあるんです。

財団:なるほど。

先生:かと思うと、今度は全く離れた土地で、同じようなメロディーや所作が出てくる。これについて
    話すと専門的になってしまって面白くないでしょうから、今回はお話しませんが・・・。
    私が皆さんにお勧めしたいのは、是非、ご自身の住んでいる土地だとか、お生まれになった
    土地だとかの芸能を一度見てください、ということです。そして、それをベースにして他の芸能
    を見ることで、「あ、ここが違うな/同じだな」というように鑑賞すると、これまでなかった様々
    な発見があるのではないでしょうか。

[映画の見所]

財団:公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団の記録映画は、どんなところが見所ですか?

先生:民俗芸能の主要なジャンルを網羅的に扱っているのは、本当に素晴らしいお仕事だと思い
    ます。

財団:ありがとうございます。

先生:そして、作品ごとに着眼点が異なるため、民俗芸能の様々な側面の知識を得ることができ
    る映画なのではないでしょうか。基本は押さえつつ、さらにそれぞれの深みにまで言及して
    いる、そんな映画だと思います。

財団:では、芸能の初学者の方にも分かりやすい映画であると言えるでしょうか?

先生:はい。そう思います。是非、これから日本の芸能について学ぶ若者や、日本の文化を学ぶ
    留学生が見ると良い映画だと思います。

[フランスへの留学について]

財団:ところで、先生は日本の民俗芸能の研究がご専門ですよね?それなのに、なぜパリ大学
    (ソルボンヌ大学)に留学したのですか?

先生:はい、よく聞かれる質問です。皆さん不思議に思われるんですね。一番の理由としては、
    民俗芸能の研究にフランスの構造人類学のアプローチを応用していたためです。また、
    専攻としている「民族音楽学」の最新の知識を得るためにパリ大学の博士課程に留学しました。

財団:そうなんですね!パリへの留学と聞くと、とてもお洒落な雰囲気があります。

先生:そんなことないですよ。家、大学、図書館にしか、ほとんどいませんでしたから。研究に埋没し
    すぎて、買い物にも行けず、家の前にあったケーキ屋さんのケーキだけで生活していた時期
    もあります。

財団:ケーキだけで生活!羨ましいような、体重が心配のような・・・

先生:(笑いながら)それが、いつもより頭を使ってるからか、どんどん痩せたんです。不思議でしょ?
    ちょっと不幸自慢のようになってしまいましたが、それだけでなくパリでは、講演会や研究会で
    の第一線の研究者たちとの交流は、私にとってとてもいい刺激になりました。

[今後について]

財団:今後、どんな研究をされていきたいですか?

先生:そうですね、これから記録映画の解説を書く中で示していけたらと考えておりますが、具体的
    には、来年1月に出版する著書(博士論文)までは秩父地方の神楽を研究していましたので、
    今後は地域・ジャンルを広げて民俗芸能の音楽を採取・分析し、民俗芸能の音楽の様々な繋
    がりを研究していきたいと思っています。


■川﨑瑞穂先生
<経歴>
2014年9月~2015年7月 パリ第4大学(ソルボンヌ大学) 音楽学博士課程 留学
2016年3月 国立音楽大学大学院 音楽研究科 博士後期課程 音楽研究専攻 音楽学研究領域 修了

<受賞歴>
2011年3月 国立音楽大学「有馬賞」
2012年7月 日本ジラール協会「ライムンド・シュヴァーガー記念論文賞」
2013年3月 国立音楽大学大学院「最優秀賞」
2013年11月 遠野文化研究センター「遠野文化奨励賞(佐々木喜善賞)」
2015年11月 日本風俗史学会「日本風俗史学会研究奨励賞」
2016年4月 日本科学協会「笹川科学研究奨励賞」
2017年2月 川崎市、川崎市教育委員会、川崎市文化協会 「川崎市文化祭奨励賞」

<著書>
(共著)『遠野学 vol.3』遠野文化研究センター、2014年
(共著)Apocalypse Deferred: Girard and Japan, University of Notre Dame Press, 2017.
(単著、刊行予定)『徳丸流神楽の成立と展開―民族音楽学的芸能史研究―』第一書房、2018年刊行


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